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なでしこJは優勝以外「意味がない」のか W杯の戦いを海外絶賛、結果論に偏る日本の風潮に警鐘

世界中から受けた好意的な評価

 もちろん、「勝てば官軍、負ければ賊軍」はスポーツの原則の一つである。単純な話、サッカーはゴールを多く取るほうが勝つ。なでしこは、その原理原則で敗れている。

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 しかしながら、サッカーの面白さは勝つか、負けるか、だけではない。どのようにボールを操り、つなぎ、運び、崩し、それを集団でどう行い、争ったか。そこに挑む姿に一喜一憂するのだ。

 その面白さを共有できない限り、スポーツの未来は厳しい。

「勝ち続けなければ意味がないです」

 選手は言うが、言わせてしまっているのは気の毒で、息苦しいほどの重圧だろう。世界女王になることだけが、唯一の救いの道になっているのだ。

 今回、なでしこは世界中から好意的な評価を受けた。それは必ずしも、勝ったからではない。プレーそのものが魅力的だったからである。単純にボールが転がるリズムが良く、置きどころや運ぶタイミング、外す技術や逆を取るパス、シュートに至るプレーに魅力があったからだ。

 なでしこの選手たちのプレーは煌めいていた。

 長谷川唯、長野風花で組んだダブボランチは、阿吽の呼吸で見事な協調関係を発揮し、攻守の両輪だった。赤髪の遠藤純は左利き独特のリズム感で、左サイドから作る攻撃の形のアクセントになっていた。一方で右サイドの清水梨紗は攻め上がりのタイミングの良さと馬力を見せ、果敢にゴールまで迫った。シャドーストライカーとして裏へ抜ける天稟を披露した宮澤ひなたは、大会5得点でシンデレラガールとなっている。

 では、なぜ彼女たちはスウェーデンに敗れたのか。

 その視点で語られるのが、勝負の世界でもある。

 前半、なでしこは相手のインテンシティに押され、攻守の判断が曖昧になった。我慢しきれず、FKからこぼれを押し込まれ、失点を喫した。やや受け身になる選手起用だったか。

 失点や得点のディテールを突き詰めた場合、修正の余地はある。

 先制点ではGK山下杏也加がセットプレーのクロスに対して出て、パンチングという選択をしたが、ペナルティエリア外に弾き飛ばせなかった。原則的にはミスと言える。あるいは、植木理子はPKを外した場面で、「もっと練習を」「別の選手が蹴るべきだった」と批判を受けるかもしれない。成否が勝負を大きく分けたのは事実だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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