「目が悪ければメガネをかけるのと同じ」 国枝慎吾、車いすテニスで取り除いた世間とのギャップ
コートに別れ告げた国枝は次のチャレンジへ「色んな価値に触れてみたい」
認知度アップには個々の選手における人気も大きく関わってくる。特に車いすテニスはその側面が強いのかもしれない。
国枝は言う。
「たとえばイギリスでの大会なら(地元の)アルフィー・ヒューエット選手を目当てに来る人も少なくはありません。でもそれって車いすテニスも一般のテニスも変わらないですよね。僕だってロジャー・フェデラーの試合ばかり観ていましたから。これって凄く大事で、トップ選手がどれだけ人気かというところにお客さんやメディアの興味が引っ張られる。競技として楽しいと思ってもらえることと同時に、この選手いいなっていう個々への関心が競技の人気自体につながっていくように感じます」
車いすテニス界で最大の人気を誇った国枝はコートを去るが、日本には16歳の小田凱人という新たなスター候補も現れている。車いすテニス界の未来は明るいと国枝は信じている。
車いすテニスの可能性も広がりを見せている。一般のテニスと車いすテニスのプレーヤー同士がペアを組むニューミックスは公式種目になっていないとはいえ、かつて国枝と錦織圭がエキシビションに出場したとあって反響も大きかった。こういった取り組みの一つひとつが、きっと共生社会を後押ししていくに違いない。
コートに別れを告げた国枝は次のチャレンジに向けて動き始めている。
「今はバスケをやったり、水泳をやったり、楽しみを求めるのが結局はスポーツになっちゃっています(笑)。今年1年くらいはテニスの世界から離れて、いろんな価値に触れてみたいですね。もう少し英語も勉強したいので、留学も含めて考えているところ。自分の知見を広げていくなかで熱を注げるものが見つかったら、より素晴らしいセカンドキャリアになるんじゃないかと思っています」
(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)