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世界のサッカーで日本の“常識”は通用しない 海外挑戦する選手が磨くべき国際感覚

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本と海外における行動規範の違いについて。世界に飛び出して戦う選手には、ピッチ内外において日本の“常識”が通用しないことを念頭に置いて戦う必要がある。

近年は多くの日本代表選手が海外で活躍。それぞれが国際感覚を磨いて日々戦っている【写真:Getty Images】
近年は多くの日本代表選手が海外で活躍。それぞれが国際感覚を磨いて日々戦っている【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:行動規範が異なる日本と海外

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本と海外における行動規範の違いについて。世界に飛び出して戦う選手には、ピッチ内外において日本の“常識”が通用しないことを念頭に置いて戦う必要がある。

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 サッカーというスポーツがボーダーレスになっていくなか、育成年代でも国際的感覚は求められる。今年度の高校サッカー選手権で注目されていた神村学園のFW福田師王(→ボルシアMGⅡ)のように、高校卒業後に欧州に渡るケースも出てきている。今後、こうしたケースは増えるだろう。

 想像以上に、サッカーはユニバーサルなスポーツである。

 それだけに、自分たちの道徳観だけで行動していると、痛い目を見ることになる。

「信用」「礼節」「忠誠」

 例えばそれらは、日本人の中にそこはかとなく組み込まれている道徳観だろう。自分を信じてくれた人を裏切るべきではないし、人に対しては礼をもって接し、恩を受けたらそれを返す。封建的な関係において、誠実に行動することは日本人のモラルとして根幹を成し、新渡戸稲造の『武士道』でも世界に向けて紹介されているほどだ。

 その道徳観は、サッカー界にも通底している。

 しかし世界のサッカーでは、その“常識”が必ずしも通用しない。例えば、信用の中に抜け目のなさのようなものが求められたり、挨拶もスキンシップの度合いがまるで違ったり、忠誠に至ってはその概念が欠落していたりする。そこで、戸惑うこともあるだろう。

 欧州や南米の選手に同じような行動様式を求めても、上手くいかない。行動規範が異なるからだ。

 例えば、練習で日本人選手が指導者に「クロスをワントラップしてシュート」と命じられたら、大半の日本人は頑なにワントラップしようとする。忠実に言いつけを守る、そこにプライオリティがある。しかし、スペインやアルゼンチンの選手は自分の判断で、ダイレクトでも、コントロールしても打つ。目的はあくまでゴールであって、指示はあくまで原則に過ぎない。

「ルールは破るためにある」

 そう捉える欧州や南米の選手と、日本人は対決しないといけないのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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