世界のサッカーで日本の“常識”は通用しない 海外挑戦する選手が磨くべき国際感覚
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本と海外における行動規範の違いについて。世界に飛び出して戦う選手には、ピッチ内外において日本の“常識”が通用しないことを念頭に置いて戦う必要がある。
連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:行動規範が異なる日本と海外
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本と海外における行動規範の違いについて。世界に飛び出して戦う選手には、ピッチ内外において日本の“常識”が通用しないことを念頭に置いて戦う必要がある。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
◇ ◇ ◇
サッカーというスポーツがボーダーレスになっていくなか、育成年代でも国際的感覚は求められる。今年度の高校サッカー選手権で注目されていた神村学園のFW福田師王(→ボルシアMGⅡ)のように、高校卒業後に欧州に渡るケースも出てきている。今後、こうしたケースは増えるだろう。
想像以上に、サッカーはユニバーサルなスポーツである。
それだけに、自分たちの道徳観だけで行動していると、痛い目を見ることになる。
「信用」「礼節」「忠誠」
例えばそれらは、日本人の中にそこはかとなく組み込まれている道徳観だろう。自分を信じてくれた人を裏切るべきではないし、人に対しては礼をもって接し、恩を受けたらそれを返す。封建的な関係において、誠実に行動することは日本人のモラルとして根幹を成し、新渡戸稲造の『武士道』でも世界に向けて紹介されているほどだ。
その道徳観は、サッカー界にも通底している。
しかし世界のサッカーでは、その“常識”が必ずしも通用しない。例えば、信用の中に抜け目のなさのようなものが求められたり、挨拶もスキンシップの度合いがまるで違ったり、忠誠に至ってはその概念が欠落していたりする。そこで、戸惑うこともあるだろう。
欧州や南米の選手に同じような行動様式を求めても、上手くいかない。行動規範が異なるからだ。
例えば、練習で日本人選手が指導者に「クロスをワントラップしてシュート」と命じられたら、大半の日本人は頑なにワントラップしようとする。忠実に言いつけを守る、そこにプライオリティがある。しかし、スペインやアルゼンチンの選手は自分の判断で、ダイレクトでも、コントロールしても打つ。目的はあくまでゴールであって、指示はあくまで原則に過ぎない。
「ルールは破るためにある」
そう捉える欧州や南米の選手と、日本人は対決しないといけないのだ。