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高梨沙羅が追求する「日本刀で竹を斬る」速さ 10年来のトレーナーが知る進化の舞台裏

高梨沙羅も行った筋力トレーニング、大きな重りは必要としていない【写真:THE ANSWER編集部】
高梨沙羅も行った筋力トレーニング、大きな重りは必要としていない【写真:THE ANSWER編集部】

無駄を省き高梨の強みであるスピードを強化

 同時に、高梨の強みを強化した。牧野氏が特に重視したのはスピードで、飛び出しからマキシマム(落下開始点)まで素早く移行することを目指した。

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「彼女の場合は体が小さいので、パワー勝負でクラマー(オーストリア/新型コロナウイルス感染で五輪欠場)とか、アルトハウス(ドイツ)もそうですけど、筋量がすごく多い選手と勝負しようと思うと、どうしても不利。それを補っているのは彼女の技術力だし、その技術を体現するには、スピードが彼女の場合は命かなと思っています。10メートルを速く走るスピードというよりは、スッと無駄のない速さ。無駄を全部省いていけば、最も速くなるはずだから、そんなスピードを求めてやりました」

 例えるなら「日本刀で竹を斬るようなイメージ」と牧野氏は続けた。力を使うのではなく、なるべく使わずに、能力の最大値を発揮する。

「もっと高く、もっと速くと思うと、どうしても力を使いたくなるんですよ。(ウエートなどで)力をつけちゃえば、それに引っ張られて、力を使おうとするので、そこが上手くいかなかったねという年もあったんですよね。そういう力の使い方を変えたかった。

 あとは、力みってスピードを遅くする要素があって、力と速さって相反するものなんですよね。力を使おうと思ったらスピードが遅くなるので、ジャンプの踏み切りのタイミングが外れたり、あとは太ももの筋力を使おうとすると、どうしてもお尻が下がっちゃう。そういうのも原因で、いろんな失敗につながっていたかなというのもちょっと反省としてあって。人間って、抜きと差しが上手く連動すると、ものすごくキレが出たり速さが出る。彼女の場合は高さよりは前に速く進みたい。なるべく速く空中姿勢に移行したほうがいい。グッと前に進んでいける。そういうのをジャンプに求めたんです」

 新型コロナウイルスの発生により、昨シーズンは1年間、会うことができなかった。アスリートのわずかな変化を感じ取ることもトレーナーの仕事。LINEやZoomでのやり取りで、それが十分にできないことに葛藤した。

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牧野講平


1979年9月23日、北海道出身。学生時代は陸上選手として活躍。イースタンワシントン大学卒業。スキージャンプの高梨沙羅のトレーナーを10年にわたり務めるほか、フィギュアスケートの浅田真央やテニスの錦織圭、フェンシングの太田雄貴、メジャーリーガーの前田健太など数多くのトップアスリートの指導歴を持つ。一般社団法人日本コンディショニング協会理事。
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