「青森山田時代」をどう見るか 環境面に優位性なし、中等部からの“6年間”育成が機能
黒田監督が考える「良いバランス」を今年度のチームが実現
以前、黒田監督は「(中等部出身者が)多すぎてもダメだし、少なすぎてもダメだと思っている」と語っている。下から上がってくる選手だけで構成するようではチームがマンネリ化し、高校で外からスカウトしてくる選手だけではチームに骨がなくなる。その時「良いバランスは半々くらい」とも言っていたのだが、今年のチームは図らずもそのさじ加減に落ち着いた。黒田監督自身が中学校の指導にもあたって6年スパンの育成を機能させつつ、高校から入ってきた選手たちとタフな競争をさせてお互いを伸ばしていく。この流れが機能している。
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中高一貫での指導を謳うチームは増加傾向だが、このバランスが良くないチームが少なくないようにも感じる。また松木が中学生でいち早く高校の練習に混ざり、試合出場も経験していたことから分かるように、中高の風通しの良さもポジティブな要素だろう。
青森山田高校の試合を青森まで観に行くと、必ず目をキラキラさせながら先輩たちの姿を食い入るように見つめる中学生たちに出会うのだが、松木の背中を追う選手から第2の松木が出てくるのも、そう遠い日ではないと確信させられる。また、高校の選手たちにとっても、「自分たちは憧れられている存在である」というのは己を律する意識を高めるので、自ずと相乗効果があるのも見逃せないと感じている。
年度ごとに大きく勢力図が変わるのが高校サッカーの常。そのなかで地力を維持しつつ、今年最大級のブレイクスルーを遂げた青森山田には敬意を抱くほかない。もっとも、この「青森山田時代」を良しとしない学校は全国に数多い。またガラリと選手が入れ替わる来季の勢力図がどうなるかは、まだ見えてきてはいない。
(川端 暁彦 / Akihiko Kawabata)