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東京五輪の各競技に見たリーダーシップ ラグビー廣瀬俊朗「吉田麻也選手が強く印象に」

廣瀬俊朗さんが強く印象に残った吉田麻也の姿を語る【写真:松橋晶子】
廣瀬俊朗さんが強く印象に残った吉田麻也の姿を語る【写真:松橋晶子】

強く印象に残った男子サッカー代表主将・吉田麻也の姿

 僕はラグビー日本代表で主将をやらせていただいたこともあり、やはりどの競技でも主将やリーダーの存在が気になります。今回、特に印象に残ったのが、サッカー日本代表の主将を務める吉田麻也選手の落ち着きでした。

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 大舞台で注目を集める中、プレッシャーを感じさせることなく、とても落ち着いていたことが率直にすごい。チーム内でいいリーダーシップを発揮しているんだろうと感じました。PK戦の末に勝った準々決勝のニュージーランド戦後のコメントを聞いた時は、達観しているな、と。自分も試合を戦う当事者なのに、冷静で落ち着いている。あの姿は強く印象に残っています。

 29年ぶりにベスト8入りした男子バレーボールでも、石川祐希選手がプレーでチームを引っ張っていく姿が目に留まりました。ああいう形のリーダーシップもやはり大事だと思います。

 オリンピックを見ながら考えたのが、競技によって求められるリーダーシップの在り方が違うのではないかということ。競技によって監督・コーチと、選手の距離感も変わってくるのではないかと考えています。

 例えば、ラグビーセブンズでは、試合が始まってしまえばコーチはハーフタイムで少し声を掛けるくらい。バレーボールやバスケットボールでは、コーチはコートサイドから頻繁に指示を出しています。競泳やアーティスティックスイミングなどは、プールに入ってしまえばコーチの声は届かないので選手が主体となる。競技の特徴とリーダーシップの在り方について調べてみると、面白い傾向が見えてくるかもしれません。

 ラグビーセブンズ男子代表の松井千士選手も、自身のパフォーマンスでチームを引っ張っていました。苦しい戦いにはなりましたが、最後に1勝できたことは良かった。正直なところ、勝つチャンスがなかったわけではありません。勝てたであろう試合を勝ちきれなかった、そこに課題があるような気がします。3年後のパリは開催国ではないので、アジア予選を勝ち上がらなければなりません。そこに向けて課題解決に努めることが求められます。

 ラグビーは男子以上に女子代表の強化を見直す必要がありそうです。今回も選手の一生懸命取り組んでいる様子や想いはよく伝わってきましたが、まだ世界との差はある。これは選手だけの問題ではなく、協会をはじめとする日本ラグビー界が一体となって取り組まなければならない課題。継続的に強いチームを目指すのであれば、たまたまいい選手が集まって勝てた、というのではダメです。大きな戦略やビジョンを元に選手を育てる仕組みを作り、再現性や汎用性を高める必要があるでしょう。今回のラグビーはそういった点で弱かったように思います。

 僕自身、スポーツが持つ力に感動し、また様々なトピックスについて考えさせられた東京オリンピック。今回の経験を今後の活動に生かすと同時に、改めてアスリートの皆さんに大きな拍手を送りたいと思います。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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廣瀬 俊朗

THE ANSWERスペシャリスト 元ラグビー日本代表 実業家

1981年10月17日生まれ。大阪府出身。5歳からラグビーを始め、北野高(大阪)、慶大を経て、東芝入り。07年日本代表初選出。主将も務め、キャップ数28。16年に現役引退後、ビジネス・ブレークスルー大学大学院で経営管理修士(MBA)取得。公式アンバサダーを務めた19年W杯は解説のほか、国歌を歌って各国をもてなす「Scrum Unison」、TBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」出演など、幅広い活動で盛り上げた。現在は株式会社HiRAKU代表取締役。ラグビーにとどまらずスポーツの普及、教育、食、健康に重点を置いた様々なプロジェクトに取り組む。日本テレビ系「news zero」木曜パートナーとして出演中。

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