【開幕特集】札幌は「もう、下を争うチームではない」 躍進へのカギは新戦術の浸透
アグレッシブな戦術を実現させるための肝は「対人守備」
マンツーマンディフェンスの肝は、言うまでもなく文字通り直訳した「対人守備」だ。それぞれの選手がマークする相手を明確にし、責任を持ってその選手を封じることが求められる。今季から新たにそうした戦いをするにあたり、「自分の特徴は一対一での守備力」と岡村が言えば、「一対一のところでは絶対に負けない自信を持ってやっている」と柳も語る。
この戦術では自陣ゴール前で相手と同人数での対応が求められる場面も出てくるし、誰かが相手の突破を許してしまえば、たちどころにピンチになるリスクも秘めている。対人プレーに自信を持つ彼らの加入は間違いなく戦術を強化してくれることだろう。
昨季は現体制ワーストとなる58失点を喫してしまったが、彼らの加入により、その減少が見込めそうである。岡村は昨季のJ2で全42試合にフルタイム出場というタフガイ。柳は一昨季のモンテディオ山形、昨季のベガルタ仙台といった期限付き移籍先では左右のウイングでもプレーしており、最終ラインだけでなく両サイドの戦力アップも果たしてくれるはず。新天地での躍動が楽しみな2選手だと言える。
チーム全体に話題を戻すと、昨年は上位進出を目論んでシーズンがスタートしたものの、最終的には12位に終わってしまった。そのため当然のことながら今季は、リベンジへの意欲はものすごく強まっているはずだ。前述したようにペトロヴィッチ監督就任1年目にリーグ4位。翌年はJリーグYBCルヴァンカップ準優勝と続けてクラブの歴史を塗り替えてきただけに、昨季も意欲は高かった。
しかし、新戦術浸透に時間をかけたこともあって順位は振るわなかったが、戦術が着実に形となった終盤戦は成績が上向いていた。秋口には優勝した川崎フロンターレにアウェーで2-0と完勝するに至ったのである。今季も間違いなく、どの選手もタイトルあるいはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得を貪欲に追い求めていくはず。マンツーマンディフェンスというアグレッシブな戦術を武器に、この2021シーズンは札幌が日本サッカー界を北から熱くしていくかもしれない。
(斉藤 宏則 / Hironori Saito)