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強豪校で丸刈り断固拒否 レスリング界の“異端児”高谷惣亮が部活に求める「多様性」

高谷が高校時代に撮ったレスリング部の集合写真、前列中央にひと際目立つ長髪の選手が…【写真:本人提供】
高谷が高校時代に撮ったレスリング部の集合写真、前列中央にひと際目立つ長髪の選手が…【写真:本人提供】

学生時代は「生意気野郎」だった、理に適った髪を切らないワケとは

 高谷の「考える力」が垣間見られたのが、7月21日に参加した「オンラインエール授業」だった。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画。インターハイ中止により、目標を失った高校生をトップ選手らがオンラインで激励し、「いまとこれから」を話し合う。高谷は培った知識や経験を基にアドバイスを送った。

 高校生27人が参加した1時間の授業。“高谷先生”が冒頭に披露したのが、高校時代の集合写真だった。周りの男子選手は頭を短く刈り込んでいるが、中央にひときわ目立つ長髪の選手がいた。前髪は目にかかり、もみあげ、襟足も長く伸びている。当時の強豪レスリング部は丸刈りが“慣例”。しかし、自己主張が激しかった高谷は「かなり生意気な高校生だった」と苦笑いしながら、今の高校生たちにこんなエピソードを明かした。

「レスリングは凄く硬派なイメージがあって、当時からレスリング部に入ったら丸刈りにしなさいと指導者からよく言われていたんですけど、僕は唯一丸刈りにせずに髪を伸ばしていた。『髪を切れ』と言われても『切りません』と返す。『切るか、やめるかどっちかにしろ』と言われて、『じゃあレスリングやめます!』というくらいかなり頑固な性格。指導者の方にとっては凄く手のかかる子だったかなとは思います」

 こんなやり取りは日常茶飯事。中学からよく指摘されていた。ただし、髪を伸ばしたかったのは、思春期特有の反抗的な気持ちや幼稚な理由とは違う。ここにも“理に適っていない”という疑問があったからだ。今回インタビューをしたのは、高校生への授業を終えた直後。こんな話をしてくれた。

「丸刈りはルールではなかったんですよ。いうなれば強制なんです。決められたルールではなく、『みんなやっているんだ。だから、お前もしろ』という強制。『じゃあ、丸刈りにしたら勝てるんですか』と聞いたこともあります。そしたら『いや、それはわからん』って。『じゃあ、丸刈りにする必要はないじゃないですか』って言い合いをしたことがあるんですよ。理に適ったことには従うんですけど、そういう理不尽なことに関しては凄く文句を言ってましたね。生意気野郎ですよ(笑)」

 理解しないとやりたくない。自分で何度も考えた上で納得できなかったからこそ、指導者にも噛みついた。

 誰にだって譲れないものが一つや二つあるはずだ。他人にとっては些細なことでも、本人にとっては重大なこと。高谷にとってそれが髪だった。髪を切らなかった理由についてこう明かす。

「自分にとって髪の毛は、命の次に大切なくらい凄く大事にしているもの。めっちゃかっこつけたいんですよ。かっこつけてなんぼの人生だと考えていて、プラス目立ちたいというのがある。当時はキムタクやタッキー、水嶋ヒロとかが流行っていて、『丸刈りでかっこいいっていうのは、さすがにないだろ』みたいなものが自分の中にあった。芸能人の方のまねをして髪の毛を伸ばしていたんですけど、そこも自分の中で意思がありましたね」

 かっこいい、可愛い、感動するなど、美的センスは個人の主観による。丸刈りで武骨な男を「かっこいい」と思う人もいるだろう。高谷は幼い頃から長い髪に強烈なこだわりがあった。では、なぜかっこつけたいのか。「これが高谷惣亮の本質だと思うんです」と臆面もなく語った。

「モチベーションなんですよね。例えば、かっこいいと言われるとやっぱり嬉しいんですよ。だから優勝して、パフォーマンスをして『高谷がまた何かやってるよ』となった時でも、『高谷選手かっこいいですね』と言われたら僕も『もう一回また頑張ろう』とモチベーションに繋がる」

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