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球団一筋30年 ロッテ名物ウグイス嬢の誕生秘話「ドームだったら違っていたかも」

ウグイス嬢の最大の魅力は「現場の臨場感と充実感」と語った【写真:球団提供】
ウグイス嬢の最大の魅力は「現場の臨場感と充実感」と語った【写真:球団提供】

ウグイス嬢の最大の魅力は「現場の臨場感と充実感」

 凄いのは技術だけではない。96年10月1日の近鉄25回戦以降、今日までなんと1試合も休むことなく連続担当を継続中。20年以上に渡って鉄人ぶりを発揮しているのだ。そんな谷保さんに、ウグイス嬢人生最大のピンチを聞いてみた。

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「2005年の本拠地最終戦、初芝さんの引退セレモニーの日ですかね……。会社に来てから熱が上がって、40度くらいあってビックリしました。始めは声が出ていたんですけど、だんだん出なくなってしまって。セレモニーの時には声がカスカスになっちゃってました。あまりにもカスカスで『谷保さん、泣いてるんじゃないか』とお客さんに言われていたくらいです」

 熱が出ると声が出なくなることを悟ってから、風邪にはかなり敏感だ。暇さえあればうがいをし、「風邪菌を拾ったんじゃないか」と察知すると初期段階でも風邪薬を服用。良いとされるものは試している。また、連戦が続けばさすがに声が出づらくなるが、暗い声にはならないよう歌を歌ったり、スコアボード係やDJに対してダジャレを言って気持ちを明るく保っている。

 30年勤めあげている、この仕事の最大の魅力とは一体、何なのだろうか。

「臨場感ですかね、現場の。放送室の場所も、窓を1つ開けたらグラウンドという場所。こんなに近く、一体感のある場所、グラウンドとスタンドが見える中で試合進行ができるというのは魅力ですし、『試合終了でございます』と話して、結婚式の司会者みたいな感じで終わらせるという1つの充実感。1試合1試合の充実の積み重ねのようなものはやりがいかもしれないですね」

 新型コロナウイルスの影響で、プロ野球の開幕は3か月遅れた。試合がなかった5月、球団公式ツイッターの企画で、ファンからリクエストの多かった懐かしの選手でスタメンを組み、実際にコールをして届けた。動画は20万回以上再生されるなど、予想以上の反響に驚いた。

「この期間、ファンの方たちが一番、野球が見れなくて寂しかったと思うんですが、お手紙をいただいたり、ツイッターの企画にたくさんコメントをいただいて。早く球場に行きたいし、谷保さんの声も聞いて野球を楽しみたいと言っていただいた。リクエストをもらったりすると、長く応援してくださってる方がいらっしゃるんだなという感激がありましたし、励みになったというか、改めて今年はそれを感じましたね」

 最初から全力で駆け抜けてきた。いつ「辞めなさい」と言われても悔いはない。ただ、1つだけ願いがある。ロッテが05年、10年に日本一になった瞬間はいずれも敵地。ZOZOマリンでの胴上げを目にしたことはまだない。

「まだビジターの黒いユニホームで、テレビでしか胴上げを見ていなくて。なので、ホームで、この球場で、マリーンズのファンがバーッといる中で、ストライプユニが歓喜している様子を見たいなというのはあります」

 こう願って迎える節目の1年は、例年とは違う形で開幕する。23日の本拠地開幕を前に、プロ野球界に携わる1人として、最後にこう語ってくれた。

「観戦したいお客さん全員が来れるわけではないシーズンになりそうですし、ネット、テレビでも伝わるような、興奮できるような試合展開がたくさんあるといいなと思いますね。『うわー、次は絶対球場に行きたい』というような試合が。私は何もできないですが、元気な声だけは中継に乗るように何とか頑張ろうと思います」

■谷保 恵美(たにほ・えみ)

 1966年5月11日生まれ。北海道帯広市出身。帯広三条高では野球部マネージャー。札幌大女子短大に進学後も札幌大野球部のマネージャーを務める。90年にロッテオリオンズ入社。91年から主に2軍の球場アナウンスを担当する。94年からは主に1軍本拠地を担当し、96年10月1日の近鉄25回戦以後は1試合も休むことなく連続担当を継続中。昨年7月30日のオリックス戦で担当1800試合を達成した。今季ウグイス嬢歴30年となる。右投右打。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

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