【今、伝えたいこと】情熱、結束、品位、規律、尊重 大西将太郎「ラグビー憲章の5つの言葉が現代に必要」
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
連載「Voice――今、伝えたいこと」第12回、元ラグビー日本代表戦士のメッセージ
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は新連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。
第12回はラグビー元日本代表・大西将太郎氏。07年のワールドカップ(W杯)フランス大会に出場し、ラグビー不遇の時代から競技を支え続け、今は解説者として活動する41歳は、ラグビーという競技が持つ価値がコロナ禍の日本に生きると思いを語った。
◇ ◇ ◇
未知なる感染症と日本が闘う今、「闘う」を体現し続けるラグビーだから、示せる価値がある。
大西氏が問いかけた。
「ラグビー憲章が定めている『ラグビーの5つの価値』をご存じでしょうか」
世界のラグビーを統括する団体ワールドラグビーが定める「ラグビー憲章」。その中に5つのフレーズがある。
情熱、結束、品位、規律、尊重――。
この言葉を挙げ、大西氏は続ける。
「今、この5つの価値が現代に必要な部分じゃないか。何より大事なことは『規律』です。感染症の対策は原則、個人に任されている。特に、日本はロックダウンをせずに闘っている。だからこそ、規律が未来を切り開く武器になると思う。もう一つ、僕が思うラグビーの一番の良さは『誰かのために』という言葉。今こそ規律をもって、誰かのために行動すれば、それが未来につながる」
コロナウイルスに打ち勝つ「情熱」、その思いで一つになる「結束」、パニックにならずに落ち着き振る舞う「品格」、多様な価値観を理解し合う「尊重」。そして、これらを着実に実践・遂行する「規律」。ラグビーの5つの価値を「今」に当てはめると、こんな風になるだろうか。
その上で「One for all, all for one(一人がみんなのために、みんなが一人のために)」というラグビーに根付く精神を、この世の中に重ね合わせた大西氏。かつて日の丸を背負い、世界の大舞台で戦った競技の代表の一人として思いを明かす。
「日常の生活が奪われ、制限され、今は人々が孤立している状態。それは『結束』とはかけ離れているけど、心と心は通じ合い、結束を守らないといけない。それは昨年、流行語にもなり、W杯で僕らが学んだ『ONE TEAM』という意識じゃないか。
今、世界では『中国のせいだ』と言ったり、『あの人、感染しているんじゃないか』と疑ったり、人間が持つ負の部分がたくさん出ている現状。そこをスポーツが持つ価値から学び、人と人の触れ合いをスポーツで取り返せる日が来てほしい」
そう価値を唱えたラグビー界も、大きな打撃を受けたことは事実だ。