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スポーツにできる“言葉を超えた”交流 ウクライナ避難民の10歳少年に伝えた仲間と喜び合う意味

ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを持ち、20年以上にわたって現地で育成年代の選手を指導してきた中野吉之伴氏が、「THE ANSWER」に寄稿する不定期連載「サッカーと子育て論」。ドイツで子供たちを日々指導するからこそ見える、日本のスポーツ文化や育成年代の環境、子育てに対する考え方の違いなどについて迫る。今回は戦争によりウクライナから避難した10歳少年と指導者として接して感じた、言葉の壁を超えるスポーツの力と可能性に思いを巡らせた。

ドイツ対ウクライナの試合前、エスコートキッズを務めた避難民の子供たちが走って退場していった【写真:Getty Images】
ドイツ対ウクライナの試合前、エスコートキッズを務めた避難民の子供たちが走って退場していった【写真:Getty Images】

連載「ドイツ在住日本人コーチのサッカーと子育て論」、ユーリ少年との3か月の交流

 ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを持ち、20年以上にわたって現地で育成年代の選手を指導してきた中野吉之伴氏が、「THE ANSWER」に寄稿する不定期連載「サッカーと子育て論」。ドイツで子供たちを日々指導するからこそ見える、日本のスポーツ文化や育成年代の環境、子育てに対する考え方の違いなどについて迫る。今回は戦争によりウクライナから避難した10歳少年と指導者として接して感じた、言葉の壁を超えるスポーツの力と可能性に思いを巡らせた。

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 6月12日に行われたドイツ代表の親善試合は通算1000試合目だった。この記念すべき試合の対戦相手がウクライナだったことには大きな意味がある。

 ドイツサッカー連盟(DFB)会長ベルント・ノイエンドルフは、この試合について次のように語っている。

「この試合は特別なもので、特別な意味がある。我々は対ウクライナで試合をするのではない。ウクライナとともに試合をするのだ」

 この試合でチャリティ目的の特製ユニフォームが販売され、売り上げはすべて寄付される。またドイツ代表選手が着用したユニフォームがオークションにかけられ、こちらもすべて寄付に。さらにはこの試合を担当したギリシャ人審判団のアナスタシオス・シディロプロス、ラインハルト・ブクスバウム、カサン・コウラ、ロアニス・パパドプロス、ビデオ審判のアリストテリス・ディアマントプロス、スプリドン・ザンパラスは収入を、そのままウクライナ支援のために寄付することを表明している。その額およそ4000ユーロ(約62万円)。それぞれができるところで関わろうとする。その流れを生み出すきっかけの一つとして、この試合が持つ意味がある。

 ドイツにはウクライナからの避難民がたくさんいる。そしてドイツの数多くのサッカークラブが、進んで受け入れをしている。

 僕が監督をしているチームにも、ウクライナからの子供が来ていたことがある。ユーリ(仮名)は10歳でサッカーが大好きな男の子。いつも練習時間のずっと前からグラウンドに来て、楽しそうにボールを蹴っていた。ドイツ語はもちろん喋れない。英語を少し解するだけ。だからコミュニケーションをお互い取るのは簡単ではない。

 サッカーはそんなことをしなくても通じ合える最高のツールだ。でもだからといって、お互いにやりたいプレーをやっているだけではそこにチームとしての思いは生まれない。ドリブルで勝負をしてシュートを外すと、チームメートが不満を表す。じゃあ次はどうしようというのを積み重ねて、お互いを理解して、お互いのミスを受け入れていくことでサッカーになっていく。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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