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パラスポーツ指導者が重視する「できない」と「できる」の間にある「分かる」

伝えるときには同じ言葉を使うようにしているという【写真:保田敬介】
伝えるときには同じ言葉を使うようにしているという【写真:保田敬介】

動作と言葉の方程式は決して崩さない、それが鉄則

――健常者の選手にとっても「分かる」ことは大事でしょうか。

「大事だと思います。私の場合、これまで指導してきたのは障害者が中心ですが、健常者のお子さんの中には分かっているように見えて、実は分かっていないというお子さんがたくさんいると思うんです。健常者のスポーツ指導の場合、動作理解にしても、基本的に一斉に指導することがほとんどでマンツーマン指導ではありません。つまり、選手一人ひとりの理解度を確認しながら、手間ひまかけて指導する方法はなされていないことが多い。

 ここで大事なのは、指導者が本当に伝えたい技能が選手に伝わっているかどうかなんです。一斉指導をする場合には、選手や生徒が理解できているのかという確認を、必ずした方がいいと思うんですよね。

 日本ではまだあまり例はありませんが、海外ではパラリンピック指導者が健常者のチームを教えると、めちゃくちゃ強くなったという事例があります。健常者と障害者のトップコーチが共同で指導をしているという国もあります。

 健常者を指導するコーチの皆さんも、『できない』の前に分かっているかどうかに着目して見極めてみるのもよいのではないでしょうか。そういう観点があると技能の向上がスムーズにいかない選手への指導方法を検討することができるんじゃないかと思っています」

――どのように練習をしているのでしょうか。その際、気をつけていることはありますか。

「まず、どんな練習でもいいので一度やらせてみます。そして改善すべきところを見つけたら、言葉かけをしていくのですが、その時に気をつけるのが、いろんな伝え方をしないこと。同じ動作を違う言葉で表現すると、選手が混乱してしまうので、この動作はこの言葉、というように動作の方程式のようなものを絶対に崩さないようにしています。伝えるときには同じ言葉を使うようにして、まずは理解を促します。時にはトライアル・アンド・エラーを繰り返し、『分かった!』となるまで理解できるようにするための方法をいろいろと試します」

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