子供に“ヒント”と“安らぎ”を― 育成年代の指導者に求められる「距離を縮める」慧眼
ふと思い出した話がある。以前、ある年配のドイツ人指導者らと会食をしていた時のことだ。他愛のないことをみんなでわいわい話していると、1人の男性がふいに、最近入ってきた若い同僚が使えないと、職場での愚痴を吐露し始めた。
【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――年配指導者が説く“手本”の必要性
ふと思い出した話がある。以前、ある年配のドイツ人指導者らと会食をしていた時のことだ。他愛のないことをみんなでわいわい話していると、1人の男性がふいに、最近入ってきた若い同僚が使えないと、職場での愚痴を吐露し始めた。
「まだ経験がないんだからミスをするのは分かるが、そのミスを認めようとしないんだ。ふくれてばっかり。『最近の若い奴らは……』って、俺たちも言われてきたけど、今の若い連中も『まったく、最近の若い奴らは……』だ」
それを聞いた周りのほとんどの人がこれに同意し、口々に「いや、ウチの職場でも……」とか、「本当に年上に対するリスペクトがないよね」とこぼし出した。
すると、それまで黙って耳を傾けていた年配指導者がそっと口を開いた。
「最近の若い奴らは……、か。なるほど、たしかに若者、少年たちの中には、他人に対する態度ができていない者がいるな。リスペクトの気持ちを感じさせない者もいる。しかし、では、彼らはどうやってリスペクトをすることの大切さを学ぶべきだと思う? 年配者が率先して他者をリスペクトし、コミュニケーションを取ることの大切さを見せないで、どうやって若者がそれを知ることができるだろうか?」