1対1で走った3000m、異例のレースは「凄くやりづらかった」 初V大園倫太郎が生かしたチームの絆【日本学生陸上】
陸上の2024日本学生個人選手権は16日、神奈川県のレモンガススタジアム平塚で最終日を行った。男子3000メートル障害では大園倫太郎(鹿屋体大4年)が8分48秒80で初優勝した。このレース、5人がエントリーしていたもののスタートしたのはたった2人。サシで優勝を争うという異例の展開を制した大園は「すごくやりづらかった」と苦笑い。優勝の裏では、同大ならではの強みを生かしていた。
3000m障害をスタートしたのは2人だけ…激戦で生きた鹿屋体大ならではの環境
陸上の2024日本学生個人選手権は16日、神奈川県のレモンガススタジアム平塚で最終日を行った。男子3000メートル障害では大園倫太郎(鹿屋体大4年)が8分48秒80で初優勝した。このレース、5人がエントリーしていたもののスタートしたのはたった2人。サシで優勝を争うという異例の展開を制した大園は「すごくやりづらかった」と苦笑い。優勝の裏では、同大ならではの強みを生かしていた。
「最初から(エントリーが)5人だったので、どういうレースをしようかなと思っていたら、2人でしたからね……」
異例のレースを制した大園は「すごくやりづらかった」と苦笑いだ。最初から最後までマッチレース。最後の周回で緒方快(関東学院大3年)を引き離し6秒弱の差をつけたものの、まさに戦いきったという表現がピッタリだ。
スタート地点で何を考えたのか問うと「ふだんから先頭で引っ張るレースが多いので、自分の土俵に引っ張り込めばいいのかなとは思いました」と作戦がスラスラ。「ただ緊張感はすごかったです。どこかで先に行かれたらどうしようと」。実際にラスト1周に入る前の水濠で、先行を許しかけた。なんとか抑えきると緊張が解けたのか、ゴール直後にガッツポーズ。「鹿屋体大は800メートル組が好調なんです。優勝で勢いをつけたかったので、そのうれしさがありました」。男女計3人が決勝進出を果たした800mのメンバーに、いい流れを運べたと喜ぶ。
さらに中距離組の強さは、長距離や駅伝を戦う上でも大きな利点があるという。「僕らの特徴でもあるんですけど、トラックもしっかり、駅伝もしっかりやるんです。ミドルの800や1500の選手と同じ練習をすることで、スプリントの強さが生まれる。5000なんかでもマックスから押し上げる余裕が生まれるんです」。どんな長距離も、ゴール前では相手とのバトル。スプリント能力が求められる。このレースでも最後の競り合いを制することができたのは、この環境があったからだ。
男子800メートルを1分48秒19の好タイムで制した岡村颯太(鹿屋体大2年)も、中長距離の選手が一緒に練習をするメリットを「人数が多くなるので、よりレースに近い環境でやれるというのはあると思います」と逆の視点から口にする。
鹿屋体大は国立で唯一の体育系専門大学。研究結果は選手たちにもフィードバックされている。様々な種目の選手が訪れ、十種競技で日本記録保持者の右代啓祐のトレーニングなどは、大きな参考になったという。「右代さんは体の使い方がうまいんです。体格は全然違いますが、共通する部分がある」と大園。今季の目標は9月の日本インカレでの表彰台、さらにチームとしては10月に行われる出雲駅伝へ19年ぶりに出場する。スポーツを冷静に見る目が、旋風を巻き起こすか。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)