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なぜ競泳は0.001秒まで測って決着つけない? 3人同着メダルの例 陸上など導入も…敢えてやらない理由

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

男子400m個人メドレーで銀メダルを獲得した松下知之【写真:ロイター】
男子400m個人メドレーで銀メダルを獲得した松下知之【写真:ロイター】

「シン・オリンピックのミカタ」#45 連載「オリンピック・トリビア」第13回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

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 今回は連載「オリンピック・トリビア」。いろんなスポーツが行われる五輪を見ていると、それぞれの競技のルールやしきたりなど「よくよく考えると、これってなんで?」と不思議に思うことがないだろうか。スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和とスポーツを40年追い続けたスペシャリスト・荻島弘一氏が、そんな今さら聞けない素朴なギモンに回答。オリンピック観戦を楽しむトリビアを提供する。第13回は「どうして競泳は1000分の1秒まで測って決着をつけないの?」。

 ◇ ◇ ◇

Q.どうして競泳は1000分の1秒まで測って決着をつけないの?

A.昔のプールがひどい作りだったから。

【解説】 

 オリンピックで行われるタイムを争う競技の多くは、1000分の1秒まで計測して順位を決めます。陸上のトラック種目でも記録としての残るのは100分の1秒までですが、実際には1000分の1秒までのタイムで順位をつけます。100メートルが10秒だとすれば、1秒で10メートル。1000分の1秒はわずか1センチですから、本当に僅差です。

 ところが、競泳では100分の1秒まで並べば同着。オリンピックでは16年リオデジャネイロ大会男子100メートルバタフライで初めて3人が同着となり、銀メダルが3つ出る珍事も起きました。表彰台に3人が並ぶ姿に「1000分の1秒まで測れば」という声も聞こえてきますし、技術的にも可能です。そうしないのは、競泳ならではの理由があるのです。

 手動計時だったオリンピックで本格的に電気計時が導入されたのは1972年ミュンヘン大会から。1000分の1秒まで測り、男子400メートル個人メドレーは1000分の2秒差で金メダルが決まりました。ただ、当時のプールは今ほど精巧ではなく、塗装状態などでコースごとに長さに差があったのも事実。外側のコースほど波の影響を受けるため有利不利もありました。そんな状態で1000分の1秒まで争うことの是非が問われ、国際水連は73年に「100分の1秒まで同タイムの場合は同着」のルールを決めたのです。

 当初は少なかった同着も、近年は増加傾向にあります。昨年の福岡世界選手権でも女子100メートル平泳ぎは3人が銀メダル。競技のレベルが全体的に上がり、決勝レース出場選手の実力が拮抗してきたためかもしれません。

 ちなみに、決勝のコースは予選の上位から4、5、3、6、2…と中央を泳ぎます。これも、かつての「中央のコースが有利」という名残です。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)


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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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