渋野&原ら「黄金世代」は何が違うのか もう一つの最強「藍ちゃん世代」から見る進化
黄金世代がこれからぶつかる壁とは
一方でクラブの性能がよくなっていくことで、10~15年前と比べると選手の技術が落ちているのではないかという見方をする人もいます。飛距離が伸びてアスリートゴルファーが増えていますが、ボールを曲げる技術に関しては、一、二世代前の選手の方が長けていたと思います。今のクラブは、ボールを曲げたくても曲がらないように作られているからです。
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でも、みんなそのクラブで戦うので、今のクラブで育った選手はそれでいいのではないでしょうか。それぞれの持ち球が出ていればいい。昔と今の選手でスイングが違います。今はジュニアでも、よりシンプルになって個性的なスイングは減っていますよね。だから、今のクラブではそれが正解。飛距離は伸びているので、総合的に考えたらレベルは上がっていると思います。
黄金世代がこれからぶつかる壁は「体の変化」。20代後半から30代にかけて、あまり自分では感じない変化があります。それを補うにはトレーニングが必要。筋肉をつける場所を少しでも間違えてしまうと、体の動きが悪くなる。ゴルフはトレーニングをやればやるほどいいというわけではなく、柔軟性や感性が凄く大事なスポーツです。
今の選手は幼い頃にゴルフを始めているので、手首の腱鞘炎など勤続疲労を抱えることが多いですよね。打つ時の衝撃は思っている以上。今の選手は練習量も多いですし、若くても腱鞘炎になったり、首や腰を痛めたりします。痛めてしまう年齢が早いと感じますね。
(20代後半で)私も柔軟性がなくなってきていると感じていました。手首も腱鞘炎になり、ブロック注射でごまかしながら試合に出ていました。練習したいけどできない。でも、シーズンは始まるし、トーナメントは続く。シードも守らないといけない。体が本調子じゃないと気分が落ちてしまうことはありました。体の変化に応じていかないといけません。
藍ちゃんの活躍でツアーが盛り上がり、ファン層が大きく変わりました。以前は男性のゴルフ好きなファンが多くゴルフ場に来てくださっていましたが、家族連れ、女性も増えました。今はお休みもないくらい試合数が増え、賞金額も上がっています。一時代で盛り上がったことで環境が一気によくなり、多くのサポートがつくようになりました。恵まれていることで、よりゴルフに集中できる環境が整っています。
藍ちゃん世代がゴルフ界に遺したものはたくさんありますが、これからの選手たちに引き継いでいってほしいのは、ゴルフの技術よりも「私たちが活躍できる舞台を大事にすること」です。トーナメントがあるのが当たり前ではありません。開催してくださるスポンサーを大事にするのは、樋口久子さんの会長時代から非常に厳しく言われていました。
スポンサーの方々は、トーナメント前のプロアマ戦を凄く大事にされています。やはり女子プロと一緒にゴルフを楽しんでもらいたい。これを疎かにしてしまうと、試合もなくなっていくかもしれない。自分たちがどんなに頑張りたくても、試合がないと自分たちが活躍する場がなくなってしまう。
見てくださる人に楽しんでもらうには、プレーのレベルも上げていかないといけない。女子ツアーを盛り上げていくために、個人が考えていかないと。コロナ禍で大変な中でも試合を開催していただけるので、黄金世代、その下の世代の選手にはそういうことも考えながらやっていってほしいですね。
■北田瑠衣/THE ANSWERスペシャリスト
1981年12月25日生まれ、福岡市出身。10歳でゴルフを始め、福岡・沖学園高時代にナショナルチーム入り。2002年プロテストで一発合格し、03年にプロデビュー。04年はニチレイカップワールドレディスでツアー初優勝し、年間3勝で賞金ランク3位。05年には宮里藍さんとペアを組んだ第1回女子W杯(南アフリカ)で初代女王に。06年から10年連続でシード権を保持した。男女ツアーで活躍する佐藤賢和キャディーと17年に結婚し、2児のママとして子育てに奮闘中。
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(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)