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「私にとって生理がなくなるのは、命がなくなったのと同じ」 陸上・新谷仁美選手が隠さず語る、女性アスリートの生理問題

新谷さんが一番に心に残っている、生理について母からもらったメッセージとは【写真:荒川祐史】
新谷さんが一番に心に残っている、生理について母からもらったメッセージとは【写真:荒川祐史】

初潮は中学2年のとき「母に『私も生理が欲しいっ!!』とねだっていました」

――少しさかのぼり、初潮について伺います。新谷さんは中学2年のときに初潮を迎えたそうですが、そのとき、どんな気持ちでしたか?

「友達は早い子だと小6で初潮が来ていたので、よく母に『私も生理が欲しいっ!!』とねだっていました。自分よりも初潮が早かった子って、背が高く、体形も大人だったので『生理が来たら、私も女のコっぽくなれるんだ!』と、なんとなく感じていたんですね。母にはいつも『もうちょっとしたら来るよ。そうしたらお赤飯炊こうね』と言われていたので、生理が来るって誕生日的なことかな、すごいことなんだなって思いました。だから、初めて生理が来たときは母に『キターーッ!』って感じでパンツを見せました(笑)。これで私もみんなと同じだって、うれしかったです」

――あけっぴろげですね(笑)

「そうですね。私には兄がいますが、うちでは父や兄の前でも生理のことはふつうに話していました。私は中学時代、陸上のほか、水泳、バトントワリングをやっていたので、体にぴったりしたウェアを着ていたんですね。例えば、『生理だから衣装を着るとお腹が出ちゃうんだよね~』とか」

――生理のことについて、お母さまと話したり、教わったりしたことで覚えていることはありますか?

「一番、心に残っているのは『学問は0点でもいいのよ。人間としての常識とマナー、生きるうえでの強さは、お母さんが生きている間に、仁美もしっかり準備してね』と言われたときのことです。『強さって何?』と聞くと、母は『たくさんあるけれど、生理もその一つよ』と答えました。ちょうど高校生になり、本格的に陸上に取り組み始めた頃。練習量が一気に上がり、体にかかる負担も増えていました。生理不順になりやすい環境だったので、『生理をなくしちゃいけないんだよ、なくてラッキーと思わないでね』という母のメッセージだったのかな、と思います」

――素晴らしい言葉ですね。

「実は生理を軽んじる発言は、指導者だけでなく、選手の親からもあります。子どもにとっては、親の言葉が正解。世の中のほうが間違っていると思ってしまいます。また、親に余計な心配をかけたくないと、生理が止まっても相談しない子もいると思います。一番難しいのは、家族間の問題は他人が手を出すことができない点です。今、指導者も練習日誌に生理日を書かせたり、『自分ではわからないから産婦人科に行け』と言うようになったりと、大きく変化しています。でも、選手に最も近い親の考え方が変わらない限り、女性アスリートの生理問題は根本からは解決できないのでは、と思います」

――今、指導者の話になりましたが、新谷さんは中学、高校とも男性指導者でしたか?

「はい。恩師は2人とも男性です。個人ミーティングでは、体の状態から学校生活まで、ちょっとでも不安に思うことは、素直に話すことができました。生理中だと報告すると、『きちんと生理を保てるように、メンタルからケアしろよ。先生も練習内容をしっかり考えていくからな』と言ってくれました」

――中学生から男性の先生に生理のことを話せるって、なかなかできないと思います。

「でも、やっぱり先生とコミュニケーションが取れる、助けてもらえると、心強いですよ。以前、高校の恩師から『新谷がチームのトップ選手でよかった』と言われたことがありました。高校のチームは私がトップ選手だったので、チーム作りも私に合わせて行っていました。『もしも生理に否定的な考えを持つ選手がトップだったら、自分もその選手に合わせて、生理を否定する人間になっていたかもしれない。新谷がトップでオレは運がよかった』って。その言葉を聞いて、すごくうれしかったです」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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