誰が婦人科に行ったか、知らぬ間に学校で知られ… 女性の月経問題、最前線の課題は「地域格差」――競泳・伊藤華英「女性アスリートとニューノーマル」
これからの女性アスリートのニューノーマル、今の若い世代に望むこと
「THE ANSWER」も「女子とスポーツ」というカテゴリーをサイト内に設置。伊藤さんらとともに2017年から月経はもちろん、摂食障害や貧血などの健康障害、引退後のセカンドキャリア、結婚・出産を含めたライフプランなど、女性アスリートを取り巻く課題を長く継続的に取り上げ、発信してきた。
そして、2021年から「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」という特別企画を展開している。毎年、アスリートが登場した連載を掲載し、伊藤さんは3日に行われるオンラインイベントでゲストとMCとして登場。自身が取り組んできた月経など、女性アスリートの今とこれからについて専門家らと考えを交わす。
「THE ANSWERさんは柔軟性があって迅速ですよね。世の中の出来事に迅速にキャッチをして、すぐにアウトプットして、現場の声を吸い上げたい気持ちがとても伝わってくる。イベントに関しても、アスリートや専門家の先生など仲間が毎年増えているのが素晴らしい。興味を持たれている方は、構えずに参加して欲しい。大変なことを解決しなければ、頑張って勉強しなければと思うと大変。ちょっと知らない世界に行ってみようくらいの感覚でいい。みんなで考えれば世の中は良くなりますから」
これからも女性アスリートのニューノーマルを作っていく伊藤さん。最も大切なことは今、まさにスポーツに取り組み、汗を流している女性アスリートたちの未来だ。部活生からトップ選手までカテゴリーはさまざまだが、特に若い世代に望むことがある。
「自分の人生はティーンエイジャーでも、思春期に入った13歳過ぎから十分に考えられるし、十分に責任を持って楽しむこともできると思います。その世代は自分の価値観を構築していく大切な時期。そのために社会の環境を理解してほしいし、いろんな情報を手に取ってみてもいい。それに必要になるのは常識というより社会的なリテラシーです。昔は新聞やテレビのニュースなど与えられたものを読めば良かったですが、今は情報を自ら選択する時代。すると、どうしても手にする情報が偏り、バイアスがかかる。そのバイアスに気付いてほしい。すべてを鵜呑みにはせず、“選択する時代”だからこそ自分の頭で考えられる女性アスリートが多く育ってほしいですね」
(「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」2日目はフィギュアスケート・村上佳菜子さんが登場)
【競泳・伊藤華英さんの「人生で救われた、私のつながり」】
「今、私のロールモデルだったと思うのは田中ウルヴェ京さん(当時シンクロナイズドスイミング・現在女子アーティスティックスイミング、1988年ソウルオリンピック銅メダリスト、スポーツ心理学者)。スポーツ心理学をアメリカの大学院で修士を取られています(慶応義塾大学で博士号も取得)が、引退後はお嫁に行くという風潮も強かった時代に女性で修士を取るのはなかなかないこと。今は引退後に大学院などで学ぶ人も多いですが、その先駆けの存在であり、ご自身のキャリアをしっかり考えられた先輩のアスリート。私自身、引退後に相談させていただき、京さんがいなかったら、私も早稲田や順天堂に通うこともなかった。そういう意味では尊敬もしてますし、刺激をいただく方です」
※「THE ANSWER」では今回の企画に協力いただいた皆さんに「あなたが人生で救われたつながり」を聞き、発信しています。
■伊藤 華英 / Hanae Ito
1985年1月18日生まれ。埼玉県出身。東京成徳大高―日大―セントラルスポーツ。背泳ぎで2008年北京オリンピック100メートル8位、2010年に自由形に転向し、2012年ロンドンオリンピック出場。同年秋に引退した。引退後は早大大学院スポーツ科学研究科に進学、順大スポーツ健康科学部で博士号取得。2017年に東京五輪組織委戦略広報課の担当係長に就任し、大会の成功に尽力。2021年から教育プログラム・スポーツを止めるな「1252プロジェクト」を立ち上げ、リーダーとして活動を推進している。「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」では3日に行われるオンラインイベントにも出演する。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)