人工透析の夫に腎臓の1つを提供 選手生命に黄信号も「片腎レギンスアスリート」が諦めないワケ
リスクを承知で挑戦する理由「『ほどほど』ができないタイプなんです」
それから4か月。山本は「片腎レギンスアスリート」として、自分の体を使った“実証実験”を続けている。参考になる前例がない中、様々な文献にあたりつつ、試行錯誤を繰り返す日々。文章、写真などの投稿サイト「note」でも経過を発信している。
1日100グラム以上摂取していたタンパク質は上限を1日70グラムに設定。体重の1.5倍グラム程度でも筋量はアップするという研究論文を参考にした。思った以上に調整は難しく、80グラムに設定し直したものの、結局90~100グラムの範囲になってしまうことも多い。
「タンパク質を減らすと、炭水化物や脂質など他の何かで栄養を摂らないといけないわけで、結局太りやすくなっちゃう。凄く難しいです」
現状、筋量は確保できているが、問題は減量だ。「以前はタンパク質だけはいくら摂ってもよくて、炭水化物と脂質をガーッと減らせたけど、タンパク質にキャップをかけているので、こっちも減らすとカロリー不足でフラフラしちゃう」。これまでの方法は通用しない。パーソナルトレーナーと相談しながら、手探りの日々が続く。
次の定期検診は8月。本来は1年に1回の検査で十分だというが、ボディコンテストを「どうしてもやりたいんです」と医師に相談すると、半年に1回になった。リスクを承知で挑戦する理由を尋ねると、「私は『ほどほど』『適度に』ができないタイプなんです」という答えが返ってきた。
トレーニングを始めた理由には、移植後の検診で血圧が急上昇していたこともあった。医師からは腎臓移植とは直接的な関係はないと説明されたが、経験したことがない高血圧。「この調子であっという間に腎臓病になるんじゃなかろうか」と怖くなった。「ほどほどに」と思いながら毎日飲んでいたお酒を、やっとやめられた。