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わが子にさせたいスポーツどう選べばいい? 競技選びと適性の見極めに親ができること

将来トップレベルのスポーツ選手になるには、子どもが低年齢のうちから特定競技に専念する指導環境に置く必要があると考えている親が多いのではないだろうか。わが子にはいつ、どんなタイミングで競技を始めさせるべきなのか。そして数あるスポーツの中から、適性の高い競技をどう見極めるのか。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で昨夏までサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)フィジカルコーチを務めていた、広瀬統一(のりかず)氏にお話を伺った。(文=前田 成彦)

早稲田大学スポーツ科学学術院教授の広瀬統一氏【写真:下山展弘】
早稲田大学スポーツ科学学術院教授の広瀬統一氏【写真:下山展弘】

元なでしこジャパンフィジカルコーチ・広瀬統一氏インタビュー

 将来トップレベルのスポーツ選手になるには、子どもが低年齢のうちから特定競技に専念する指導環境に置く必要があると考えている親が多いのではないだろうか。わが子にはいつ、どんなタイミングで競技を始めさせるべきなのか。そして数あるスポーツの中から、適性の高い競技をどう見極めるのか。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で昨夏までサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)フィジカルコーチを務めていた、広瀬統一(のりかず)氏にお話を伺った。(文=前田 成彦)

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【将来スポーツ選手になりたいなら、小さいうちから特定競技に打ち込むべきか?】

 数々のプロサッカークラブのユースチームにて、フィジカルコーチ、コンディショニングコーチを務めてきた広瀬氏。これまで10年以上にわたり、小学生から高校生まで3000名以上の選手を対象に指導を行ってきた。

 アスリートとして成功するために、特定競技に専念することは早ければ早いほどいいのか。幼少期から競技の専門的な動きを身につけさせることは、将来の活躍へとダイレクトにつながるのか。まずはこの点から、お話を伺っていく。

「幼少期からひとつの競技に専念させる方がいい、という考えのひとつの根拠として『1万時間ルール(※1)』があります。ひとつの分野でエキスパートになるための目安として1万時間が必要、という考えですが、育成理論としては根拠がやや曖昧と言わざるを得ません。

 競技によって違いはありますが、私が携わってきたサッカーで言えば、小さい頃から競技特化するのは早急であり、幼少期から専門性の高いトレーニングをさせるより、遊びも含めたさまざまな動きをさせ、今後の成長に向けた土台作りを行うことが大事だと言われています。

 昨今、そういった研究結果が多く報告されていて、ドイツのブンデスリーガのU16とU19の代表選手を対象に、代表に初選出された時期と、24歳までにプロとしてどのカテゴリーのリーグに到達したかを調査(Gullich A., 2014)したところ、選抜された時期が早いからといって、将来が保証されるとは限らないことが分かっています(U16で代表に初選出された選手で1部リーグレベルに到達した選手は20%に満たず、U19で初選出された選手の約半数はその後、1部リーグレベルに到達している)」

【基礎運動とコーディネーション能力の向上=広くて質のいい土地を作ること】

そして広瀬氏は、競技パフォーマンスを高めることを「家作り」になぞらえ、こう表現する。

広瀬氏が語る、競技パフォーマンスを高めるために行うべきは二つのこととは【写真:下山展弘】
広瀬氏が語る、競技パフォーマンスを高めるために行うべきは二つのこととは【写真:下山展弘】

「できるだけ大きな家を建てたいなら、まずは広い土地がなくてはいけない。そして土地の質も大事。大きな家を建てても、地盤が弱くては家が傾いてしまう。つまり広くて質の高い土地がないと、大きな家は建てられない。幼少期に必要なのは、まず土地作りです。具体的には小学校の中学年から高学年の時期に、広くて質のいい土地を作ることです。

 そのために行うべきは二つ。基礎運動、そしてコーディネーション能力が向上するような運動です。まず基礎運動は『1.姿勢制御 2.移動運動 3.操作運動』の三つに分けられます。姿勢制御とは、身体を支え、バランスを取ること。ぶら下がる、水に浮くといったことも含まれます。移動運動とは歩く、走るなどの運動のこと。操作運動とは、投げる、打つ、押す、引く、支えるなどの動きです。そして、次に大事なのがコーディネーション能力。三つの基礎運動を目的に合わせて使い分け、多様な条件下で身体を動かす能力を高めることを言います。

基礎運動とコーディネーション能力、小学校中学年から高学年の間に、土台を作ることが必要
基礎運動とコーディネーション能力、小学校中学年から高学年の間に、土台を作ることが必要

【基礎運動とコーディネーション能力】

 この二つを同時並行で、成長期に差しかかる前の小学校の中学年から高学年ぐらいで経験させるとよいと思います。必ずしもスポーツを通じて習得する必要はありません。遊びの中に取り入れてもいいですし、競技の練習の中に多様な動きを取り入れる時間を作るのもいいですね」

 ただし、必ずしもこれらの考えが当てはまらない競技もあるようだ。

子どものスポーツの適性の見極め方について「好きになれそう、の視点で多くのものに触れさせてあげる」ことが大切と話す【写真:下山展弘】
子どものスポーツの適性の見極め方について「好きになれそう、の視点で多くのものに触れさせてあげる」ことが大切と話す【写真:下山展弘】

「例えばゴルフのように、スイングというひとつの運動で大半のパフォーマンスが構成される競技の場合、技術を獲得する意味では幼少期から始めた方がいいかもしれません。また、自転車やボートといった、姿勢の変化が少ない単一の繰り返し運動が多い競技の場合、他の競技に比べてコーディネーション能力はそれほど必要ないと思われます。

 私自身これらの競技の経験はないので、絶対に『こうだ』とは言い切ることはできません。ただ、将来どんな競技を選ぶにしても、小学校の中学年から高学年にかけてさまざまな基礎運動をすることとコーディネーション能力を向上させることは、少なからず役立つのは間違いないでしょう」

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