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美しすぎるバレーボール選手の今 パーソナルトレーナーとして歩む“第二の人生”

2019年、東京に自身が経営するパーソナルジム「PERSONS Training Salon」を開業【写真:宮坂浩見】
2019年、東京に自身が経営するパーソナルジム「PERSONS Training Salon」を開業【写真:宮坂浩見】

現役引退~トレーナーとして歩きはじめるまで

 27歳を目前にした夏。引退した滝沢さんは「バレーボール選手」ではない道に一歩踏み出す。

「アルバイトの経験さえなかったので、働くって何だろう?ってところからスタート。ただ、バレーボールに関係する仕事をしたいな、という気持ちはありました。元々、体育の先生になりたかったこともあり、じゃあ、指導者はどうかな、と思って」

 とはいえ、学校の部活動でバレーボールのコーチをするだけでは生活はしていけない。そこで、求人情報を片っ端からチェックすると、バレーボールの個人指導を請け負う会社が目にとまった。「これが仕事になるならいいな」と即応募。面接を通り、採用された。

「当時は本当に一つも社会常識がなく、面接にもTシャツで行きました(笑)。社長と総務の方にも後日、『あれは本当にビックリしたよ』と言われましたね。でも、せっかく元アスリートの方が入ってくれたからと、名刺交換、パソコンの操作、秘書検定の受験まで、社会人として必要なマナーや知識をイチから教えてくれた。これからは、社会人として出発しなければならない。そのことをきちんと教えてくれた2人には、感謝しかありません」

 新しい世界での新たな刺激。仕事も楽しかったが、次第に将来を考え始めるようになり、コーチ業を続けることに迷いが生まれた。

「当時、お付き合いしていた方と一緒に暮らしていたのですが、ゆくゆくはパートナーを養えるぐらいの経済力はつけたい、と考えていたんです。でも、その頃の給料は、一人暮らしを何とかやっていけるぐらい。仕事はすごく好き。でも、自分が描く将来像に近づくには、この仕事を続けていても難しいかもしれない、と思うようになりました」

 同じ頃、女性専用のトレーニングジムをオープンする計画を立てていた知人から、「トレーナーとして、一緒にやらないか」と声がかかる。

「トレーナーと聞いたとき、まるっきり出来ない仕事ではないな、と思ったんです。コーチ業を通じ、人に教えることは好きだし、向いているとも感じていた。今まで自分が経験してきたことにも近い仕事、という印象があったので、チャレンジしよう、と決めました」

 それから3年。ジムのトレーナーとして経験を積み、独立。2019年、東京に自身が経営するパーソナルジム「PERSONS Training Salon」を開業し、第二の人生を、着実に歩み続けている。

「現役引退後、いちばん最初に痛感したのは、『何をしたいのかわからない。何が出来るのかもわからない』ということです。

 一つの競技に打ち込んできたアスリートが第二の人生をスタートさせる際、そのことに直面することが、いちばん大変だと感じます。実際、自分は本当に何も出来ない、と痛感しましたから。

 また、自分が長年、打ち込んできたもの以上に打ち込めるものが見つからない、ということもアスリートのセカンドキャリア形成の難しさです。何か始めてはみても、これではない、つまらない、楽しくない、と、職を転々してしまう人もいます。

 私の場合、移籍するときも引退するときも、指導者の仕事を始めるときもやめるときも、誰にも何も相談しませんでした。迷わずここまで来れたのは、周りに流されることなく、節目、節目で自分と向き合い、自分で選択をし、選択した理由もはっきりさせたことが大きかったのだと思います」

 引退し、7年以上が過ぎた。今担当しているクライアントは、滝沢さんが元バレーボール選手だったことを知らない人も多い。

「これからどうしたいか、ですか? 私は10年後をイメージするより、1歩ずつ進むのが好きなんですよね。今は、1年後、2年後、そのまた先も、ちゃんと地に足をつけて、自分でやっていくために、試行錯誤しながら毎日を進んでいます。

 1日1日、お客さんと向き合い、そのお客さんがまた、私の元にトレーニングに来てくれる。日々のその積み重ねのことしか、考えられないかな」

滝沢ななえ
たきざわななえ 1987年9月22日生まれ、東京都出身。八王子実践中学・高校と進み、高校2年時に春高バレーでベスト8進出。卒業後、V・プレミアリーグ、パイオニアレッドウィングス(2006-2009年)に入団。2009年、V・チャレンジリーグ上尾メディックスに移籍し、2013年7月に現役を引退した。その後、バレーボールスクールのコーチをへてパーソナルトレーナーに転身。2019年11月、東京・六本木にパーソナルジム「PERSONS Training Salon」開業する。2017年、出演したテレビ番組で、レズビアンであることを公表。スポーツ界では数少ない、セクシャルマイノリティであることを公表している一人。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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