無償のコーチが存在も… 北米の教員にとっても運動部の指導はブラック労働なのか
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「北米の教員の部活指導」。日本では最近、“ブラック労働”“ブラック部活”といった言葉が登場し、教員の働き方がクローズアップされている。では、スポーツが盛んな米国、カナダはどうなっているか、北米の実情をレポートする。
連載「Sports From USA」―スポーツが盛んな米国、カナダの教員の実情とは
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「北米の教員の部活指導」。日本では最近、“ブラック労働”“ブラック部活”といった言葉が登場し、教員の働き方がクローズアップされている。では、スポーツが盛んな米国、カナダはどうなっているか、北米の実情をレポートする。
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働き方改革に伴って、学校の教員の働き方はブラック労働ではないのか、と指摘されるようになった。教員の長時間労働には複数の理由があるが、部活動の指導もその一因として挙げられている。
部活動があるのは日本だけではない。米国やカナダの学校も、放課後に運動部や文化部が活動している。米国やカナダでも学校の課外活動の指導にあたっているのは教員であることが多い。彼らはブラック労働問題に直面していないのだろうか。
米国は州や地域によって様々な違いがあるので一概には言えないが、日本の教育委員会に相当する学校区と教員の労働組合との労使協定によって、教員の労働条件を決めていることが一般的。給与の金額は、勤務年数や学歴に応じた体系になっている。ちなみに教員年俸の全米平均値は約6万ドル(約652万円)だ。(教員の平均年俸が4万ドル程度の州もあれば、9万ドルに達するところもある)。労使協定によって、どこまでが義務付けられた仕事なのかも細かく規定されていて、教員が学校にいなければいけない勤務時間と日数も定められている。
学校区ごとに労使協定の内容は異なるが、さまざまな課外活動は、定められた勤務外であるとみなしている学校区が多いようだ。だから、教員が、土曜日の試験監督、放課後の運動部のコーチをする時には、お金が支払われる。課外活動ごとに事細かに金額を設定している学校区もある。課外活動の指導が義務付けられた仕事でない学校区では、無理に押し付けられることはない。
例えば、公立校の教員が学校の授業を終えた後に、運動部の指導にあたるというケースでは、1シーズン(約3か月)で5000~6000ドル(約54万~65万円)が相場のようだ。もしも、秋に男子サッカー部のコーチをし、春に女子サッカー部のコーチをする場合は、2つの運動部を指導したと計算されるので、年間に1万ドル~1万2000ドル(約109万~130万円)が支払われる計算。
私立高や、時々は公立高でも、運動部の指導をするためだけにフルタイムで雇用されている職員も存在する。フルタイムのコーチには教員の年俸と同程度か、それよりもやや少ない金額の年俸が払われていることが多いようだ。
教員をしながら、放課後の運動部活動の指導もすると忙しいのは、米国でも同じ。シーズン期間は3か月とはいえ、その期間は練習を毎日するし、平日の夜に公式戦を行うことも頻繁にある。教員で運動部活動の指導も行っている人たちからは、「時間管理が必要」「家族の理解があるかどうかがポイント」などという話を頻繁に聞いてきた。