NPB戦力外から5か月…WBC豪州打線抑えた30歳左腕の知恵 「メジャーだけじゃない」野球を志す選手急増

北米だけじゃない…増える海外移籍志願者「強い国はいっぱいある」
ボールの出所をギリギリまで隠し、スライダーとシンカーを生かした。直球は最速140キロほど。この日、6つ奪った三振のうち5つはシンカーが決め球だった。緩急と落ちる球という“鉄則”を守ったのだ。「(豪州は)間違いなく自分より格上の選手たち。自分のスイングをしてくると思っていました。そうなればストライクからボールになる球とか、振らせやすいかなとか」。プロ時代より腕を少し下げた、出どころの見づらいフォームも武器だ。対戦に感性を張り巡らせ、次の攻めに生かす。いかにも日本らしい工夫が施された投球だった。
【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)
昨オフ、ヤクルトから戦力外通告を受けた山本は、実は海外への移籍も考えていた。昨季2軍での成績は20試合で防御率2.70。SNSには「まだNPBでやれる」というファンの声が並び、実際に台湾への移籍話が持ち込まれた。世界に目を向けたのは、2019年オフの経験がベースになっている。
「ロッテの時に、プエルトリコのウィンターリーグで野球をさせてもらう機会があったんです。そこで海外で1か月半ほど野球をする経験をできました。なのでむしろ違う野球にチャレンジしたいなという思いがあったんです」。動作解析で韓国の施設を使ったこともある。海外と日本の野球の違いに、日常的に触れてきた選手なのだ。
台湾からのオファーは、1か月単位の契約ということもあり最終的に見送ったものの、日本での戦力外になっても海外で野球を続けようとする選手が増えている現状を「自分が経験したことのない野球で、どこまで通用するのか知りたい選手は多いと思いますよ」と見ている。これは何も、大谷翔平投手(ドジャース)のような超トップレベルに限った話ではない。「野球はメジャーだけじゃない。WBCを見ても世界に強い国はいっぱいある。特に台湾とか韓国は、チャレンジしても面白いんじゃないのかな」。国際大会を通じて、世界の野球に関心を持つ選手は着実に増えている。
山本が最終的に、フルタイムで働きながらプレーするクラブチーム入りを選んだのも「違う野球を見てみたい」という欲求の延長線上にあった。
「僕の野球人生は、基本下からのスタート。それがなんとか人の縁もあってここまで来られたんです。プロ野球はもちろんいいですよ。華やかですし、いろんな人に見られながら野球をやるのは特別な経験でもある。ただある意味“異常な世界”だとも思うんです。もちろん活躍するために一生懸命練習した自負はあります。それでも成績を残せなかった。クビになってしまった、戦力外になってしまった。そうなった時にどうするかと考えたら……。誘っていただける以上はやろうと」
現在30歳。クラブでのプレーは野球人生の最終章になるという。その出発ともいえるマウンドは、最高の結果だった。山本が示したのは外国人打者を攻略するテクニックと同時に、プロという世界から降りてもプレーする場があるというこの国の“野球土壌”の豊かさだった。
◇ ◇ ◇
3月5日に第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕する。2006年に第1回が行われてから20年、過去3回優勝している日本の強さが世界に認められる一方、国際大会を通じて世界の野球の距離は着実に縮まっている。「THE ANSWER」では大会期間中「ベースボールの現在地」と題し、選手やスタッフが“国際野球”に挑む思いを伝える。他の種目と競技人口を比較すればマイナーといわれることもある野球。ただ世界中に、このゲームを愛する人がいる。数年に一度の注目される機会だからこそ、世界の野球の今を知り、ともに未来を考えるきっかけを作る。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
![[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト](https://the-ans.jp/wp-content/themes/the-answer-pc-v2/common/img/logo_c1.png)








