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天才レフティーも認めた久保建英の「CREMA」 10代で何度も逆境に直面、克服し増した“深み”

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は選手が少年時代の才能を伸ばす難しさについて。バルセロナでの育成年代から天才と言われた久保建英。誰もが認める天賦の才の持ち主だが、その後に何度も訪れた試練を乗り越え成長し続ける姿にこそ、フットボーラーとしての真の凄さがある。

レアル・ソシエダで輝きを放ち、日本代表でも存在感を増す久保建英。試練を糧に成長し続けている【写真:Getty Images】
レアル・ソシエダで輝きを放ち、日本代表でも存在感を増す久保建英。試練を糧に成長し続けている【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」: 逸材が逆境でこそ試されるもの

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は選手が少年時代の才能を伸ばす難しさについて。バルセロナでの育成年代から天才と言われた久保建英。誰もが認める天賦の才の持ち主だが、その後に何度も訪れた試練を乗り越え成長し続ける姿にこそ、フットボーラーとしての真の凄さがある。

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 いつチャンスを与えるべきか?

 それはサッカーだけではなく、あらゆる人材育成における1つの命題と言えるだろう。

 チャンスは与えるべきだが、むやみに与えてしまったら、甘やかすことと同義になる。おそらく、好結果を生まないだろう。スポイルされると弱さを孕んでしまい、長い目で見た場合、(力不足を気づかずに)致命的な問題になりかねない。

 一方でチャンスを与えない状況が長く続くと、成長も見込めない。成功であれ、失敗であれ、勝負を挑むことができないと、自己評価が難しいし、自己改善もできないだろう。打ちひしがれることが、むしろバネになることもあるのだ。

 では、指導者はどうやってタイミングを見計らうべきか。

「試合中、ベンチ横で猛烈にアップを繰り返し、目力を感じさせるサブの選手を使う」

 そんな話はしばしば聞く。目に見える気力は一つの判断基準になるだろう。相応のパワーを放つ選手でないと、状況を覆すこともできない。ただ、個人のキャラクターもあって、アピールの得手不得手もあるだけに……。

 だからこそ、指導者は選手が持っているものを見極め、それをデリケートに扱わないとならない。

「私は、ご褒美で出場機会など与えない。彼がデビューできたのは、彼自身が相応のプレーを練習から見せてきたからだ。これからも、彼は自身が試合に出るために準備をすることになる」

 名将フランク・ライカールトが、リオネル・メッシを17歳の時にラ・リーガでデビューさせた時のコメントは厳しくも、甘くもなく、模範的と言えるだろう。

 本当に優れた選手は、そのタイミングを待つのではなく、自ら作り出す。決して与えられるわけではない。一方で、そうした姿を見定めてくれる指導者に巡り合えるのも、ほとんど運命的と言える。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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