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サッカーとバスケで「長崎に誇りを」 総工費800億円の新本拠地で描く「競技の枠を超えた共存」

サッカー・Jリーグは今年、開幕30周年を迎えた。国内初のプロサッカーリーグとして発足、数々の名勝負やスター選手を生み出しながら成長し、1993年に10クラブでスタートしたリーグは、今や3部制となり41都道府県の60クラブが参加するまでになった。この30年で日本サッカーのレベルが向上したのはもちろん、「Jリーグ百年構想」の理念の下に各クラブが地域密着を実現。ホームタウンの住民・行政・企業が三位一体となり、これまでプロスポーツが存在しなかった地域の風景も確実に変えてきた。

10月8日に2023-24シーズンのBリーグが開幕。今季からB1に昇格した長崎ヴェルカは、ホームでの開幕戦で千葉ジェッツに勝利【写真:宇都宮徹壱】
10月8日に2023-24シーズンのBリーグが開幕。今季からB1に昇格した長崎ヴェルカは、ホームでの開幕戦で千葉ジェッツに勝利【写真:宇都宮徹壱】

連載・地方創生から見た「Jリーグ30周年」第9回、長崎【後編】

 サッカー・Jリーグは今年、開幕30周年を迎えた。国内初のプロサッカーリーグとして発足、数々の名勝負やスター選手を生み出しながら成長し、1993年に10クラブでスタートしたリーグは、今や3部制となり41都道府県の60クラブが参加するまでになった。この30年で日本サッカーのレベルが向上したのはもちろん、「Jリーグ百年構想」の理念の下に各クラブが地域密着を実現。ホームタウンの住民・行政・企業が三位一体となり、これまでプロスポーツが存在しなかった地域の風景も確実に変えてきた。

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 長年にわたって全国津々浦々のクラブを取材してきた写真家でノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏が、2023年という節目の年にピッチ内だけに限らない価値を探し求めていく連載、「地方創生から見た『Jリーグ30周年』」。第9回は長崎を訪問し、来年10月14日に開業予定の「長崎スタジアムシティ」をテーマに現地を取材した。後編ではサッカーJリーグのV・ファーレン長崎とともに、この地を新たな本拠地とするバスケットボールBリーグの長崎ヴェルカの姿を追った。総工費800~900億円と言われる一大プロジェクトで、ジャパネットが目指す「競技の枠を超えた共存」とは――。(取材・文=宇都宮 徹壱)

 ◇ ◇ ◇

 V・ファーレン長崎がトランスコスモススタジアム長崎で、藤枝MYFCに5-1で大勝利した翌日、長崎県立総合体育館を訪れた。10月8日に開幕するB1リーグ、長崎ヴェルカvs千葉ジェッツを取材するためである。あいにく小雨がパラつく天候だが、ホーム開幕ということで、体育館周辺はヴェルカのファンやブースターで溢れていた。

 普段はサッカーばかりを取材している私は、バスケットボールに関してはまったくの門外漢。千葉の富樫勇樹も長崎の馬場雄大(この日は出場せず)も「名前なら聞いたことがある」というレベルである。それでも、展開がスピーディでエンタメ要素が散りばめられたBリーグは、バスケの素人でも十分に面白い。しかもホームのヴェルカが、3ポイントシュートを何本も決めて、強豪ジェッツに91-82で勝利したとなればなおさらである。

「長崎の人はいいなあ。サッカーもバスケも楽しめて」

 ふと、そんなことを思ってしまった。これが首都圏や大阪や名古屋などであれば、まだ分かる。長崎県の人口は131万人。県庁所在地の長崎市で42万人、トラスタがある諫早市と合わせても56万人である。そんな規模感の地方都市に、J2とB1のクラブが共存しており、来年にはスタジアムとアリーナを併設した「長崎スタジアムシティ」がオープン。しかもオフィスや商業施設、ホテルまでも併設した、国内でも類を見ないビッグプロジェクトだ。

「ヴェルカと長崎スタジアムシティ、どっちが先かといえば長崎スタジアムシティです」

 そう語るのは、スタジアムシティのプロジェクトを担う、リージョナルクリエーション長崎の執行役員、折目裕である。

「ジャパネットホールディングスには、通販の他に、スポーツ・地域創生事業という大きな柱があります。きっかけとなったのが、V・ファーレン長崎をグループ会社化した時で、それが2017年。同じタイミングで、今のスタジアムシティの土地が売りに出されて、そのコンペにジャパネットが選ばれたのが18年。そして19年にリージョナルクリエーション長崎を立ち上げて、アリーナのコンテンツとしてヴェルカが設立されたのが20年。B3から毎年昇格して、今季晴れてB1になったわけです」

 ただV・ファーレンの新スタジアムを建設するのではなく、そこにアリーナも作ってBリーグも呼び込もうというアイデアは、ジャパネット社長の髙田旭人によるもの。「JリーグとBリーグはシーズンがズレているので1年を通してスポーツを楽しめる」という発想が原点であった。

 B1リーグは、東・中・西地区で合計24クラブがあり、そのほとんどがJクラブと同じ自治体を本拠としている。そんな中、長崎がユニークなのが、JとBのクラブがいずれも同じ企業の傘下に入っていること。「1年を通してスポーツを楽しめる」以外にも、さまざまなシナジー効果がありそうだ。今回、素人ながらにBリーグを取材した目的は、そこにあった。

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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