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学校に通わず部活に参加→MLBやNFL選手に成長 学習は家庭のみ、米国で広がる教育制度の是非

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は米国で広がるホームスクール制度について。

今回は米国で広がるホームスクール制度について(写真はイメージです)
今回は米国で広がるホームスクール制度について(写真はイメージです)

連載「Sports From USA」―今回は米国で広がるホームスクール制度について

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は米国で広がるホームスクール制度について。

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 アメリカでは学校に通っていない生徒でも、学校運動部に参加している例がある。

 最も有名なケースは、元NFL選手であり、その後プロ野球選手に転向したティム・ティーボウである。

 ティーボウはキリスト教宣教師の息子としてフィリピンで生まれ、彼が3歳のときにフロリダ州ジャクソンビルへ戻っている。ティーボウはアメリカでは一度も学校へは通っていない。なぜなら、きょうだいとともに家庭で学習していたからだ。このような学習形式はホームスクールと呼ばれている。

 アメリカでは1980年ごろから、保護者等が家庭で子どもに勉強を教えるホームスクールが少しずつ増え、90年代半ばまでには各州でホームスクールによる教育が合法となった。それぞれの州によって求められる要件は異なるが、州の定めたカリキュラム内容を学習することや学力テストなどが条件となっていることが多い。新型コロナウイルス感染防止のために、オンライン学習を経験した2021年以降は、ホームスクールで学ぶ子どもがさらに増えている。

 ホームスクールは、親とともに子どものペースで学習できるメリットがある。しかし、集団種目のスポーツ活動を、ホームスクールだけで完結するのは困難だ。ティーボウはホームスクールで学びながら、高校のアメリカンフットボール部の一員としてプレーした。そして、高校生選手として大きな注目を集めて、フロリダ大学へ進学したのだ。

 現在、ホームスクールの児童・生徒が、学校の運動部に参加することを認める法律は30州以上で整備されており、彼の名前にちなんで「ティム・ティーボウ法」と呼ばれている。ティム・ティーボウ法は、実は、ティーボウが高校のアメリカンフットボール部に入る以前に成立していた。1996年に、ホームスクールで子どもの教育をしていたディッキンソンが、ホームスクール生の課外活動参加を認めるようフロリダ州議会に働きかけて勝ち取ったものである。

 ディッキンソンの主張は、合法的にホームスクールで学習している生徒をフロリダ州高校体育協会が排除しているというものだった。このほかに、地域住民として税金を納めているのに公教育の一部として提供される課外活動に参加できないのはおかしい、という意見もあった。もちろん、反論もある。ホームスクールの親と子は公立学校制度に参加しないことを自発的に選択しており、公教育に付随する特権を放棄することも選択しているというものだ。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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