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灰色→青に変わった川崎のイメージ 転機から22年、「逃げられる街」を染めたフロンターレの色

ヴェルディが移転して21年後の2022年の天皇杯、改修された等々力陸上競技場で川崎ダービーが実現した【写真:宇都宮徹壱】
ヴェルディが移転して21年後の2022年の天皇杯、改修された等々力陸上競技場で川崎ダービーが実現した【写真:宇都宮徹壱】

フロンターレは川崎市に何をもたらしたのか

 ヴェルディが東京へと去っていった2001年、入れ替わるように川崎の地に浸透していったのが、川崎フロンターレである。前身の富士通サッカー部から、現在のクラブ名となったのが1997年。J1に初昇格した2000年には「川崎ダービー」が実現している。

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「翌2001年は、さまざまなことが重なった、重要な年となりました」と砂田は語る。

「まず、前年にフロンターレの社長に就任した武田(信平)さんが『今後は地域密着を重点的にやっていく』という方向性を明確にしたこと。そしてこの年、川崎市の新市長に阿部孝夫さんが就任したこと。阿部市長は『川崎市の都市イメージを大切にしたい』ということで、スポーツや文化・芸術といったものに力を入れるようになりました」

 このタイミングで砂田は、秘書部長に就任。議会と市長の調整役となる一方で、フロンターレとも直接関わるようになる。そんななか、画期的な試みとなったのが、補助金交付の改革であった。

「我々の世界では、年間の補助金を一度に交付することを『つかみ』と言います。フロンターレに関しては『つかみ』ではなく、まずイベントを提案していただいて、それが川崎市民のためになるものであれば、補助金を出すやり方にしました。天野さん(春果=当時プロモーション部部長)が持ってくるイベントの企画は、役所では絶対に出てこない発想ばかり(笑)。お互いにとって良い試みだったと思います」

 等々力でのユニークなイベントの数々、そしてクラブのさまざまな地域貢献については、今さら言及するまでもないだろう。そうした地道な活動の積み重ねが、入場者数増加を促し、2012年から始まった等々力の大改修へとつながっていく。

「20万人くらいの署名が集まったこともあって、議会でも改修についての反対は、ほとんどなかったですね。ただ、メインスタンドの改修だけで100億円弱の費用がかかると。それだけのお金をかけるなら、別の土地に新スタジアムを建てられるという意見もありました。けれども当時の武田社長から『引き続き、等々力で試合をしたい』という申し出があったんですよ。市民の意識も『フロンターレ=等々力』でしたし」

 2022年の天皇杯3回戦、改修後の等々力で初となる川崎ダービーが実現した。結果は1-0でヴェルディの勝利。「勝ってほしかったけれど、今の若い人はヴェルディが等々力にいたことは知らないでしょうね」と語る砂田に、最後に聞いてみた。フロンターレによって、川崎市はどう変わったのだろうか? 元副市長の答えは「グレーからブルーに変わりました」という、少し意外なものであった。

「市民への平成27年(2015年)の調査では、川崎市のイメージの色は、青と水色を合わせて48.8%。逆にグレーは19.2%にとどまりました。公害対策に加えて、まさに川崎フロンターレの貢献があればこそ、かつてのグレーのイメージは払拭されたんだと思います」(文中敬称略)

(宇都宮 徹壱 / Tetsuichi Utsunomiya)

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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