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「ラグビーをさせたくない空気」に強豪校も危機感 中学年代で競技人口が減る要因とは

國學院栃木が取り組む地域貢献

 そして普及への取り組むべきアイデアは、まだ残されているとも吉岡監督は考えている。部員確保の直接的な対策ではないが、國學院栃木ではチームで夏祭りなど地域の行事に積極的に参加しているのだ。

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「この夏の栃木の祭りで山車を引いたんです。自治会の法被を着てね。そうすると関係者の方、地元の方から、本当にありがたいと喜んでもらえる。爺ちゃん婆ちゃん、ラグビーなんて知らないですよね、ボールが楕円だってことすら。でも、へぇ、有難いと感じていただける。『お兄ちゃんたち、ありがとうね』『おかげさまで山車が引けたよ』と声がかかる。写真と礼状が学校に届いています。そういう活動をすると市民が応援してくれる。去年の準優勝だって、栃木市役所で全員がスタンディングオベーションで迎えて、祝ってくれた。僕も選手もサプライズですよ。そういう地域貢献や交流のなかで、様々な人たちに、お子さん、お孫さんが國學院栃木でラグビーをやってみればと思っていただければいい。

 思いついて、やってみる。反響を見る。これが大事だと思います。みんなでゴミ拾いをしていると、通りがかった人がジャンパーを見て、『國栃のラグビーさんね。いつ(花園に)出発?』と一声かけてくれる。応援してるよってね。それでチームに魅力を感じて応援していただければ、先に繋がるじゃないですか。そんなことを常日頃から考えています」

 強化にも直接は繋がらないかもしれない地域との交流だが、そんな体験が部員に人としての厚みを持たせ、成長させる。結果的に選手としての進化も促し、チームの魅力にもなる。高校時代は東京・國學院久我山の黄金時代を築いたメンバーだった吉岡監督だが、久我山の同期やOBのなかに國學院栃木に自分の子供たちを進学させている親が少なくないのも、指揮官の強いチームを作る手腕だけでなく、人としての育成を期待したからだ。

 強豪校から、15人のメンバーをなんとか集めてやってきた高校まで、聖地・花園で様々な指導者にチーム・部員数問題についての思いを聞いてきた。他の地域でも参考になる取り組みやアイデアも語ってもらえたが、その一方で、従来以上に現場=高校チーム(指導者)と協会が、ともに情報を共有して、互いに協力しながら様々なチャレンジをする必要性も強く感じさせられた。

 ここまでは、花園の現場で直接聞いた問題点や取り組みを中心に紹介してきたが、数十年という時間を俯瞰すると、高校ラグビー界が長らく続けてきた“背伸び”が、チーム数、部員数に及ぼしてきた影響も深刻な問題として浮上する。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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