「ライバルでも結局みんな仲間」 スケボー五輪王者・堀米雄斗が貫く新技へのこだわり
大会出場と同時に生涯スポーツ的側面を持つビデオパート制作にも注力
もう一つ、新しい技に対するこだわりがある。大会が先か、ビデオパートが先か、世に披露するタイミングと方法だ。
「最高のビデオパートを作りたいと思うと、新しいトリックは絶対に必要になってくる。大会で先に出してしまうと、ビデオパートを発表した時のインパクトがなくなってしまうんです。どの技を大会で使って、どの技を先にビデオパートで残しておきたいか。最近は出場する大会が多くなってきた分、そこを考えるのがすごく難しいですね」
1960年代に米国からストリートカルチャーとして世界の若者たちに広まったスケートボードは、オリンピック競技としておなじみの既存のスポーツとは、性格は少し異とする。X GamesやSLSのような大会に出場して知名度を高める人もいれば、自分のスキルやスタイルを映像にまとめたビデオパートの制作に重きを置く人もいるし、その両方を楽しむ人もいる。言ってみれば、大会出場は競技スポーツ的側面で、ビデオパート制作は生涯スポーツ的側面。同時にどちらも変わらぬ情熱を注げるのが、スケートボードの魅力でもある。
堀米も「ビデオパートで自分の好きなことをちゃんと形にして、大会でも勝てるスケーターになりたい」と両側面に情熱を注ぐ一人。大会がない時は、拠点を置くロサンゼルスをはじめ、世界各地のストリートを滑りながら映像に収めている。
「大会と違って、ビデオパートは元々その街の中にあるモノをどう滑るか。どうセクションとして使うか、どの景色を切り取るか、いっぱいやり方はあるし、映像を撮ってくれるフィルマーとかっこよく撮れるアングルを話したりしながら、最高だと思える作品を作り上げていきます。あの場所であの技を決めたいなとか、自分なりのこだわりもあったりして」
スケートボードを教えてくれた父の影響もあり、子どもの頃から数え切れないほどのビデオパートを観てきた。「スケボーってアイディアや創造力が本当に大切。自分が思いも寄らなかったようなトリックを見ると、めっちゃテンション上がりますから」。大好きなシェーン・オニールやジーノ・イアヌッチ、アイショッド・ウェアらのビデオパートを観ると、今でも大きな刺激を受ける。
これまでもビデオパートを作ってきたが、「もっとできる、もっといい作品を作れるっていう想いが自分の中にある」と話す。「自分の好きなことをやっていて、ホント自己満足なんですけど、自分でも何回も見たくなるようなものを作りたいんですよね」。ビデオパート制作は、ある意味、自分自身に対する終わりなき挑戦なのかもしれない。
大会とビデオパート。どちらも手を抜くことなく歩む両立の道。新しい技へのこだわりから、ポーカーフェイスの下に隠された深い情熱が垣間見える。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)