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サッカーと貧困からの脱出 海外選手の“ハングリー精神”を生む「戻らない覚悟」

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は南米やアフリカ出身の選手が持つ「ハングリー精神」に注目。彼らが過ごした少年時代は、多くの日本人が見ている風景とは異なるものだった。

ルイス・スアレスがもつ成功の背景とは【写真:Getty Images】
ルイス・スアレスがもつ成功の背景とは【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」: スアレスらが身につける教えられない勝負強さ

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は南米やアフリカ出身の選手が持つ「ハングリー精神」に注目。彼らが過ごした少年時代は、多くの日本人が見ている風景とは異なるものだった。

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<欧州サッカーの最新指導論を日本人用に落とし込む>

 それは成功の近道の一つと言えるかもしれない。しかしメソッドは箱にすぎず、そこに没頭すると柔軟さを失い、視野が狭くなる。育成においては一つの考え方を絶対視せず、子供の主体性を促すべきだろう。

 日本人として見ている風景など、世界のほんの一部に過ぎないからだ。

 例えば南米のトッププレーヤーの大半は、貧困層の出身である。飢餓に苦しんでいるわけではない。自由に物が買えず、日々食べるので精いっぱい、という生活だ。

「靴を買ってもらえるような家の子ではなかった」

 ウルグアイ代表FWでFCバルセロナ(バルサ)やアトレティコ・マドリードで多くの栄光を勝ち取っているルイス・スアレスは、貧乏だった少年時代をそう述懐している。

「早い話が、“低所得者層”だった。子供の頃、スニーカーを店で選んだ覚えはない。あるものを履いていただけ。でも母さんには毎日、感謝していたよ。いつも必ずできるだけのことをやってくれたから。人生はすべてが可能なわけではない。時間だけはあったから、とにかく友達とボールを蹴っていた。土がデコボコしたグラウンドや街角でね」

 スアレスはサッカーの才能に恵まれていたし、プレーに打ち込むことで、貧困層から抜け出した。似た境遇の少年で、ギャングのような道に入る例も少なくない。紙一重なのだ。

 ゴールを奪う、という渇望だけで、スアレスは道を切り開いていった。こうした「ハングリー精神」は「贅沢を覚え、満たされたら終わり」という意見もあるだろう。ただ、人生の無情を知った上で、日々を格闘してくぐり抜けた経験のある者は、やはり腰が据わる。教えることはできない勝負強さを身につけられるのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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