部活で始まるメンタルヘルスへの取り組み 「弱音を吐かない」美徳は米国でも変化
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「部活とメンタルヘルス」について。

連載「Sports From USA」―今回は「部活とメンタルヘルス」
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「部活とメンタルヘルス」について。
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私はここ5年ほど、ミシガン州立大学で開催されている指導者講習に参加してきた。主に中学校や高校の運動部活動を指導するコーチを対象とした内容で、コーチ以外にも、学校運動部をまとめるアスレチック・ディレクターという学校の管理職らも参加している。取り上げるテーマは毎年、少し違っており、2019年には、運動部活動をする生徒のメンタルヘルスが取り上げられた。その内容は次のようなものだった。
運動部活動に参加している生徒は、そうでない生徒に比べて、メンタルヘルスの問題を抱えている割合は少ないという。けれども、もし、子どもたちが何らかの問題を抱えていてサインを発していたとき、指導者側に情報や知識があれば、それをキャッチすることができる。ただし、運動部のコーチは、メンタルヘルスの専門家ではないので、その気がかりな点を誰につないでいくかも重要である。どのようなサインに気をつけるべきか、それに気づいたらどのように対応するか、など具体策が提供された。怪我、オーバーユース、脳震盪などの啓蒙が一通り終わり、次に着手すべき問題がメンタルヘルスであったのだろう。
これらの情報は皮肉にも、有用なものとなった。
2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、米国でも多くの運動部活動が中止になり、それによって生徒たちの精神面も大きく揺れた。ウィスコンシン州の高校運動部選手を対象にした調査では、軽度も含めると6割以上の選手がうつ状態を報告した。そして、今年の夏には女子テニスの大坂なおみや、米体操のシモーネ・バイルスらが、自らのメンタルヘルスの問題を公表し、アスリートの抱えるメンタル面の苦しみが注目されるようになった。
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