東京五輪17日間の光と影 罪なきアスリートに及ぶ人権侵害、照らされた世界の現実
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。1996年アトランタ五輪に競泳で出場した井本直歩子さんは引退後、国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の職員として活動。世界の貧困・紛争地を見続け、昨年3月にギリシャで今大会の聖火を引き継いだ。その経験をもとに、五輪の意義を考える。今回は「東京五輪17日間の光と影」をコラムで伝える。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#94
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。1996年アトランタ五輪に競泳で出場した井本直歩子さんは引退後、国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の職員として活動。世界の貧困・紛争地を見続け、昨年3月にギリシャで今大会の聖火を引き継いだ。その経験をもとに、五輪の意義を考える。今回は「東京五輪17日間の光と影」をコラムで伝える。
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波乱万丈の東京五輪が幕を閉じようとしています。
日本人選手たちの素晴らしい活躍に毎日感動しながら、未だにモヤモヤした気持ちを拭えません。新型コロナウィルスの感染率の急激な拡大は、それがたとえある程度予想されていたことだったとしても、「五輪と関係ない」と説明されても、やはり切り離して考えることはできません。オリパラ開催を巡って国民の間に分断が生まれ、ただでさえ練習や試合の確保で苦境に立たされてきた選手や関係者たちに、心労や誹謗中傷のダメージを与えただけでなく、大会準備にまつわる相次ぐ不祥事は、東京大会のイメージを深く傷つけました。
後味の悪さに蓋をしたまま、2週間過ごしました。
それでもやはり、選手たちの素晴らしさ、オリンピックの素晴らしさに酔いしれました。
超人たちの卓越した身体能力に、努力し続けてきたひたむきな姿。そこから生まれる、筋書きのないドラマ。嬉し涙、悔し涙や、国籍問わずライバルたちと讃え合う姿。戦い終わった選手たちの表情やコメントが、大変だったプラス一年を物語っていました。一日に何度も何度も涙腺が緩みました。
一つ、とても残念だったことは、日本のテレビで優勝した外国人のインタビューを一度も観ることがなかったことです。仕方なく海外のニュースサイトからそれを探しましたが、国境を超えた素晴らしいドラマを日本人はもっと知るべきだったと思います。
オリンピック・パラリンピックは、競技以外にも、アスリートたちを通して世界で起こっている人権問題を垣間見ることができる点も、魅力です。コロナ禍で事前合宿がキャンセルされてしまったのは残念ですが、自国開催が故に、そのあたりの報道もいつもより多かったのではないでしょうか。普段、日本の国際情勢のニュースではなかなか報じられない問題が、何の罪もないアスリートに及んでいる現実。それらの問題を少しは身近に感じさせたのではないかと思います。