[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

高校スポーツ中止にほっとするのはいけないこと? 米紙に載った2つの気になる見出し

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「大会が中止になった高校生」について。

多くの高校スポーツが打ち切りになる中、ある米紙に気になる見出しが並んだ
多くの高校スポーツが打ち切りになる中、ある米紙に気になる見出しが並んだ

連載「Sports From USA」―高校スポーツ中止、米紙に載った2つの気になる見出し

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「大会が中止になった高校生」について。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 ◇ ◇ ◇

 新型コロナウイルスの影響を受けて、ほとんど全てのスポーツが中止や中断になっている。

 インターハイや高校野球の全国大会も中止。無念、悔しさでいっぱいだろう。最終学年の選手ならば、なおさらやり切れない思いがあるはずだ。

 米国の高校スポーツも、日本とほぼ同じ状況だ。多くの州で、冬季種目は州の決勝大会などが打ち切りとなり、野球や陸上競技などの春季種目は中止になった。救済措置として何らかの大会を開くという手段もあるが、日本の高3に相当する12年生は、早いところではすでに卒業式を終えている。

 米国の高校生以下の子どものスポーツもほぼ全てが一時停止している。

 1か月前、ロチェスターシティー・ニュースペーパー電子版に、こんな見出しの記事が出た。「新型コロナウイルスでユーススポーツが追いやられた。私は心密かに喜んでいる」。「スポーツができなくなってしまった」と「心密かに喜んでいる」という2つの文章はつながらないはず……。ひっかかりながら読みすすめた。

 この男性記者は、13歳と11歳の息子がいる。2人の息子は野球とアイスホッケーをやっているが、新型コロナウイルスの影響で冬季種目のアイスホッケーは早めに終了してしまい、春季種目の野球シーズンは始まっていない。息子たちは、スポーツができない不満を父親であるこの記者に訴えた。彼らは防球ネットに向かってボールを投げたり、ローラーブレードを履いてスティックの操作をして遊んでいる。不満を漏らしていた息子たちだけれど、彼らの表情は、これまでになく楽しそうだ、と父親は感じた。自由な遊びとしてスポーツをする姿をしばらく見ていなかったからだろうと綴り、ユーススポーツの再開の日がきても「元いた場所にそのまま戻るべきか」と自問している。

 コメント欄には、この記事には同意できない、と意見が書き込まれていた。記者は同意してもらえないことはわかっていただろう。みんなが悔しい思いを抱えている。自分の息子たちもそう口にした。だから、見出しに「心密かに」という言葉を挿し込んで、率直な思いをレポートしたのだろう。

 この記者と妻は、普段は、2人の子どものスポーツ活動の送迎でとても忙しくしているそうだ。スポーツ活動が中断したことで、家族揃って夕食を食べられるようになったとも述べている。私も同じように送迎に追われていたことから、この記者のほっとする感じはよく分かる。(スポーツ活動が中断して2か月が経ち、子どもの試合を観戦したい気持ちにもなっているが)

1 2

谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集