1位じゃないとダメなのか 元オリンピック選手と考える「教育の日本らしさと弱点」
神奈川にある小学校が今、脚光を浴びている。LCA国際小学校。日本でも稀な、株式会社が運営する私立校だ。単なるインターナショナルスクール的な学校というわけではない。同校がこだわっているものが、“本物”だ。その一環として、画期的な新たな取り組みが始まった。
アテネ五輪代表・伊藤友広氏、日本初の株式会社立小学校学園長・山口紀生氏が対談
神奈川にある小学校が今、脚光を浴びている。LCA国際小学校。日本でも稀な、株式会社が運営する私立校だ。教育の理念の一つは「日本語と英語を自由に使いこなし、良好なコミュニケーションを取りながら、世界を舞台に活躍できる人間の育成を目指す」とある。バイリンガルスクールで、外国人の担任が授業の大半を英語で行う。しかし、単なるインターナショナルスクール的な学校というわけではない。同校がこだわっているものが、“本物”だ。
その一環として、画期的な新たな取り組みが始まった。アテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏が体育の授業を受け持ち、定期的に指導を行っていく。伊藤氏といえば、スプリント指導のプロ組織「0.01」を主宰し、陸上界で脚光を浴びているプロスプリントコーチ。小学生を中心とした子供世代を対象としたかけっこ教室を全国で展開してきた。元五輪スプリンターに“本物”の教えを学校で受けられるという、なんとも豪華なカリキュラムである。
LCA国際学園の創始者でもある学園長は山口紀生氏。78年に大学卒業後、公立小学校で教師としてキャリアをスタートさせたが、85年に私塾「LCA」を設立。英語教育に携わり、91年に株式会社エル・シー・エーを設立。08年に「LCA国際小学校」として文科省から認可を受け、日本初の株式会社立小学校校長に就任した。1クラス20人の少人数制のきめ細やかな指導で、毎年多くの名門中学に卒業生が羽ばたいていっているが、今回、伊藤氏を指導者に招いた。
ともに異色のキャリアを誇る2人が、このほど対談を実施。同校の教育事業全体を網羅するマネージャーでサッカーの名門海外クラブのジュニアコーチも務めていた今井洋介氏も加わり、スポーツと教育という分野から“人を育てる”というテーマについて語り合った。後編の今回は「コミュニケーションにおける日本らしさと弱点」について話が白熱した。
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今井「我々は人を育てることが大きな基盤になっています。英語が普通に使えるようになれば世界の人とつながりやすく、垣根がなくなります。同じ学校内に外国人がいることで垣根が壊れやすい。そうすることで人間の心の広さ、幅も広がっていくと思います。伊藤さんは日本から出た時に感じたものはありますか?」
伊藤「僕自身はそんなに海外の経験が多いわけではないですが、英語が話せるかどうかも含め、海外に対する準備をしているかが重要なのではないかと思います。日本と違うことを想定し、ある程度、準備されていたら動揺しないと思いますが、当時のスポーツ界はそこにあまり触れていなかったのです。“本番この会場でしっかり走ってね”くらいのものでした」
山口「表現が苦手だ、シャイだ、ということは文化によるものだと思っていたけど、実際は教育だと思っています。うちの生徒は普段は日本の文化に暮らしていますが、学校にいる時間は外国的な文化にふれている。ものすごくフレンドリーだし、積極的で、今までとは人間性が明らかに違う日本人が育っています。シャイだったり、表現が苦手だったり、日本人の欠点とされていたものがない。教育を変えれば、こうも変わるのかということが証明されたと思っています」