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八丈島唯一の高校サッカー部と島民の物語 部員14人をサポート、離島ならではの交流文化とは

離島が育む高校サッカー部がある。試合を終えた選手が帰路に着く。22時半に東京竹芝客船ターミナルを出港した大型客船が八丈島に着くのは、翌朝9時前。島にある唯一の高校が、都立八丈高校だ。

10番を背負った地元出身のMF浅沼思友は唯一の3年生。夏の最後の選手権予選にすべてを懸ける【写真:平野貴也】
10番を背負った地元出身のMF浅沼思友は唯一の3年生。夏の最後の選手権予選にすべてを懸ける【写真:平野貴也】

インターハイ東京都大会、都立八丈高校が奮闘

 離島が育む高校サッカー部がある。試合を終えた選手が帰路に着く。22時半に東京竹芝客船ターミナルを出港した大型客船が八丈島に着くのは、翌朝9時前。島にある唯一の高校が、都立八丈高校だ。

 全校生徒が140人強。そのうち、男子サッカー部は14人。島内では高校生同士で11人制の実戦を行うことができない。内地から遠く離れた離島。航路の中継地となる三宅島にある三宅高校との交流はあるが、八丈より生徒数は少なく、合同練習を行ったり、合同チームで大会に参加したりすることはあるが、練習試合を組むことはできない。3年生の最後の大会まで続ける選手が決して多くないことは、この環境と無関係ではないだろう。

 試合がほとんど経験できず、練習ばかりになる。地区新人選手権、全国高校総体(インターハイ)、高校選手権と公式戦が年に3回あるが、今季の新人戦は人数不足で不参加。4月23日に行われたインターハイ東京都大会の支部予選に出場したチームに3年生は1人。登録メンバー14人中半数の7人が1年生だった。勝てない理由をたくさん抱えたチームは、立ち上がりこそ怯んでいるようにも見えたが、次第に立ち向かう姿勢を見せていく。

 1回戦の相手は正則高校。立ち上がりから押し込まれるなか、GK石川凱生(2年)の好守とクロスバーに助けられながら耐えていたが、前半に2失点。後半22分に3点目を奪われ、さらに苦しくなった。しかし、対人プレーで鋭さを発揮していたDF山下飛穏(1年)を前線に上げると、全員の腹が決まったようだった。攻撃的なプレーの選択が多くなり、反撃が増えた。

 後半25分には前線で山下が競ったこぼれ球から、唯一の3年生であるMF浅沼思友が得意の左足でシュート。わずかにゴールの右に外れたが惜しかった。カウンターアタックを受けた試合終了間際は、GK石川がサイドの深い位置まで飛び出してスライディングでブロック。互角以上の流れに持ち込んだ。

 しかし、公式戦に慣れていない緊張感、島では体験できない高校生同士のスピード感あるプレー、慣れない人工芝への適応負担のすべてが疲労となってのしかかる終盤は、足のけいれんとの戦いになり、ゴールを奪うことはできなかった。赴任して5年目を迎えた高橋京平監督は「試合の経験が足りない。前半は、ビビってしまっていましたね。最後、やや、うちの時間になりつつあったけど、走力が……。大会は、一つのモチベーション。同じ高校生と試合をできるのは、貴重な経験。ここで勝てれば、すごく自信になる。島で大人とやっても、なかなか成功体験が得られない。だから勝たせてあげたかったんですけど……」と悔しがった。

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