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大会乱立の高校サッカー 伊指導者が育成年代の酷使に警鐘「疲労溜め込むばかりでは…」

夏休みを終えると、ACミランアカデミー千葉佐倉のジュニアユースの選手たちは、逞しくなってピッチに戻ってくる。テクニカル・ディレクターのルカ・モネーゼには、近隣のチームの指導者たちが不思議そうに声をかけてくるそうだ。

欧州では夏にバカンスを取ることが義務付けられているという【写真:加部究】
欧州では夏にバカンスを取ることが義務付けられているという【写真:加部究】

【“知日家”イタリア人指導者の育成論|第3回】夏の活動が禁止されているイタリア「十分な休養で成長ホルモンも活発になる」

 夏休みを終えると、ACミランアカデミー千葉佐倉のジュニアユースの選手たちは、逞しくなってピッチに戻ってくる。テクニカル・ディレクターのルカ・モネーゼには、近隣のチームの指導者たちが不思議そうに声をかけてくるそうだ。

「ミランの選手たちは、みんな夏が終わると身体が大きくなりますよね。何か(秘訣が)あるんですか?」

 もちろん、そこには明白な理由がある。日本では夏にイベントが目白押しで、夏休みは部活もクラブも大会に備え合宿を行うなど重要な強化期間になっている。だがイタリアをはじめ欧州では、夏はバカンスを取ることが義務づけられ、逆にサッカーのトレーニングは禁止されているのだ。

「イタリアでは、一部を除き全てのスポーツのシーズンは、9月後半に始まり、6月10日に終わります。この間は、学校もトレーニングも休みになるので、子供たちは外に出て遊ぶ機会が増えバカンスを満喫します。心身ともに十分な休養を得られるし、成長ホルモンも活発になります」

 さすがに日本で活動しているACミランアカデミーでは、イタリアと同じように休みにしてしまうわけにはいかない。

「日本では夏休みが開けてすぐに公式大会が控えていますからね。それでもジュニア用のスクールは8月一杯が休みになるし、ジュニアユースも1週間から10日間前後の夏休みを取ります。ここで疲労がリセットされ、休養することで怪我人も減るのです」

 日本では成長過程の選手たちを酷使する指導者がいても、それを制限し罰する規約がない。逆に全国高校サッカー選手権などがテレビ中継され注目を集めるようになったことで、「日本一の練習をするのが日本一への道」が合言葉のように浸透し、強豪校がトレーニングの量を競い合う歴史が続いて来た。日本サッカー協会(JFA)がリーグ戦の重視を強調し、高円宮杯プレミアリーグなどが創設されたが、旧来のインターハイや選手権が廃止されたわけではなく、ユース年代は全国大会が乱立する異常な状況にある。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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