大坂なおみ、WTA記者が見た“68位上昇の奇跡”の軌跡「一発屋で終わるとは思えない」
女子テニスのツアー最終戦、WTAファイナル(シンガポール)で今季全日程を終了した大坂なおみ(日清食品)。最後は左太もも痛による棄権で3戦全敗、1次リーグ敗退で姿を消したが、ツアー上位8選手のみが出場できる夢舞台に立った2018年の記憶は消えない。3月のBNPパリバ・オープンでツアー初優勝に始まり、9月の全米オープン制覇と一躍、スターダムにのし上がった。
ファイナル終戦で今季終了、WTA公式ライターに聞く“大坂なおみの2018年”とは
女子テニスのツアー最終戦、WTAファイナル(シンガポール)で今季全日程を終了した大坂なおみ(日清食品)。最後は左太もも痛による棄権で3戦全敗、1次リーグ敗退で姿を消したが、ツアー上位8選手のみが出場できる夢舞台に立った2018年の記憶は消えない。3月のBNPパリバ・オープンでツアー初優勝に始まり、9月の全米オープン制覇と一躍、スターダムにのし上がった。
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1月に72位を記録した世界ランクは4位に上昇。女子テニス界で最大のシンデレラガールとなった21歳の1年は、どんなものだったのか。「THE ANSWER」ではツアーを取材し、17歳当時から大坂を知るWTA公式ライター、コートニー・グエン氏をシンガポールで直撃。大坂が2018年に歩んだ“68位上昇の奇跡”の軌跡を振り返ってもらった。熟練記者が見る大坂成功の要因と、未来の可能性とは――。
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いつか必ずグランドスラムを勝つとは思っていた。2015年、スタンフォードで(サマンサ)ストーサーを破った時、初めて見た彼女の才能には驚かされた。この世界で通用するには何らかの武器が必要。持っていれば周りの目を引くし、その後も気に掛けられる。インディアンウェルズ(BNPパリバ・オープン)でそうそうたる面子相手に勝ち、その後のマイアミでも悪くなかった。
ただ全米オープン前に、優勝候補に挙げられるほどのテニスをしていたかと聞かれれば、そうではなかった。3連敗中だった。全米の前に、シンシナティで痛い負けを喫しそこそこ落ち込んでいた。ニューヨークで優勝できるような雰囲気ではなかった。最初の3試合を良い内容で勝った後に「もしかしたらチャンスがあるのでは」と初めて思った。
オフにサーシャ(バインコーチ)と組んだのが決定的だった。サーシャのおかげで技術、コンディション面で良くなったが、それ以上にナオミにとって良い相談相手になった。ナオミが必要としていたのは「指導者」ではなく「友人」だった。サーシャは若いこともあり、ナオミの憧れであるセリーナの元ヒッティングパートナーであることからナオミも彼をリスペクトしていた。
今の女子テニス界は非常に拮抗している。グランドスラムを勝てる実力を持った選手が25人ほどいる。あとはコンディション、大会期間約2週間の勢いの問題。ただ、ナオミの場合決して波に乗って全米に入った訳ではなかったので、優勝できたのがなおさら衝撃的だった。ナオミのパワーは言うまでもないが、サーシャのおかげでディフェンスが格段に良くなり、カウンターが打てるようになった。そして、パワーだけではないことを示したことによって、彼女への期待がさらに高まった。