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阪神の足を変えた男 異端の「走り指導のプロ」が36歳でもう一度“世界”に挑んだ理由

“動ける指導者”という理想の姿を追求する秋本真吾氏【写真:本人提供】
“動ける指導者”という理想の姿を追求する秋本真吾氏【写真:本人提供】

掴んだ結果より大きなもの「選手の指導に“体験して思った”と話せる」

「自分が想定したより自分の体が衰えていました。体重は現役時代よりマイナス8キロ。それも、筋力が落ちてのもの。そんな状態でも野球やサッカーのトップ選手と並走したら勝てるからある意味、満足してしまっている自分がいました。その分、痛めたことがない箇所を痛めるなど、立てた計画が全然できなかった。自分の足すら元に戻せない指導者に教わる選手、子供がかわいそうという自分の中での葛藤がありました。とにかく情けないと。

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 トラックでスパイクを履いてやるまで時間もかかりました。ラスト2か月で初めてトラック練習を入れたら想像以上に全然走れず、負荷もスピード感も違い過ぎました。もっと早くトラックに行って現実を知るべきだったのですが、いきなりスピードを上げたら足が痛くなるわ、理想と現実が離れてるわで、これは大変だと思いました。それだけ自分の感覚が鈍っている。それで教わっている人が可哀想。こういう精神的な感覚を持てたことは大きかったです」

秋本氏は自身のトレーニング過程で得た気づきを指導にも落とし込むことを目指した【写真:本人提供】
秋本氏は自身のトレーニング過程で得た気づきを指導にも落とし込むことを目指した【写真:本人提供】

 メダル獲得を目標に挑んだ本番は7位。しかし、結果より大きなものを手にしたという。

「学んだことはたくさんあります。例えば、選手、子供に『つま先で着地しましょう』と言っていたんですが、それもやりすぎると安定感がなくなる。やってみると、現役時代はもう少しかかとを下げ気味に走っていたなと気づきもありました。引退して指導する中で研究結果、データを見ていくと最先端の技術、ノウハウに寄ってしまっている自分もいました。それもある意味、発見でした。選手の指導でもつま先の接地になりすぎず、少しかかとを浮かせて走ってみましょうと表現を変えたりもしてみました。なぜなら僕が最近、体験して思ったからと話せます。いきなり言うことが変わったと思われるより、やってきた結果で感じたことと言えることは大きかったです」

 実際に指導に生かすイメージも膨らませている。

「阪神を始め、今まで関わってきた選手にはメソッドがある程度浸透しています。今回の試合に出たという体験を話すきっかけがあった人には背景を話し、根拠も説明しようと思います。ロナウド選手もボルト選手もつま先寄りで接地していたけど、振り返ると僕の現役時代は、それを支える筋力が足りなかった。今回、筋力ゼロから始まり、ウエイトトレーニングを凄くやっていましたけど、この筋力が弱いから支えられてないと思い、集中的に鍛えて走りが良くなってきたというストーリーが自分で分かります。

 例えば、その部分は女子選手にも当てはまります。そういう選手に対し、『僕はこれをやって良かった。現役時代もそうだったし、マスターズを目指してやってみて、こう感じたから』と信憑性が上がります。そこがポイントで、『姿勢が悪い』とか見たままの現象は誰でも言えますが、『なぜ悪いのか』という部分を伝えて納得させる必要があります。それが自信につながるプロセスの一つ。その部分をもう一回、腹の底から感じられたことは今回、本当にやってみて良かったと思っています」

 常に学び、動く指導者として、自らを“実験台”とし、指導に心血を注ぐからこそ得られたものは大きい。

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