育成年代で目指す「リーグ戦文化」定着 日本バスケットボール協会が見せる本気度の高さ
サッカー界に見るリーグ戦文化定着の成功例
他方、リーグ戦方式に目を向けてみると、育成という観点から有益な特徴が見えてくる。まずは、開催期間中は出場チームに一定の試合数が保証されることだ。一発勝負ではなく、負けても次の試合がある。選手・コーチ共に負けた原因を考え、修正し、実践するチャンスを与えられる。能力別にグルーピングされた中で複数のチームと対戦することで、実力が拮抗した試合が増加。また、コーチはより多くの選手に出場機会を与えることができ、様々な戦術に取り組むこともできる。
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育成年代にリーグ戦文化を定着させ、代表の強化や競技人口の裾野拡大を実践するサッカー界の成功例を見れば、JBAが育成年代にリーグ戦文化を導入しようとした流れは自然だったのかもしれない。
東野技術委員長のリーダーシップの下、リーグ戦文化導入に取り組むメンバーの1人として尽力する岩崎氏は、現在は学校現場を離れているもの、バックグラウンドは高校のバスケットボール部を指導する体育教師だ。だが、指導歴が積み重なるにつれ、育成年代の公式戦の全てがトーナメント戦方式で行われることに疑問を感じるようになったという。
「教職に就き10年を過ぎた頃から、生徒たちと接する中で、結果が全てで終わってしまうトーナメント戦文化で本当にいいのか、考えるようになりました。ちょうどその頃、体育準備室で隣の席がサッカー部の先生で、JFAから定期的に送られてくるジャーナルを読ませてもらうようになりました。中身を読んで、カルチャーショックを受けましたね。JFAでは育成年代のリーグ戦は当たり前で、選手をどう育てるか、選手のピークをどこにもっていくかを考えている。小中高校生の全国大会で勝つことが目的ではなく、代表やサッカーファミリーというもっと大きな山を見ているんですね。そこからいろいろ調べ始め、リーグ戦についてとことん研究してみようと早稲田大学の大学院に進みました」
リーグ戦文化が選手の育成、さらには競技の強化・発展にもたらす効果について研究し、論文にまとめた。ちょうどその頃、JBAでは川淵氏が土台を作り東野氏が改革をスタート。リーグ戦文化の導入・浸透に相応しい人材として岩崎氏に声が掛かり、2016年からメンバーに加わった。
とはいえ、トーナメント戦文化をリーグ戦文化に変えることは簡単なことではない。まずは2017年に各都道府県の育成担当者にリーグ戦への移行方針を発信。どうしたら多くの人にリーグ戦文化の良さを理解してもらえるか。どうしたら現場の指導者たちが変化を受け入れてくれるのか。メンバーで話し合い、作成した実施ガイドラインを発表したのが2018年のことだった。