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負けるたびに強くなった阿部詩 決して「悲劇のヒロイン」気取らせなかった恩師の信念

最も大切にしていた「負けた時の向き合い方」

 そして指導する上で、最も大切にしたことがある。それは敗戦時の向き合い方だ。ほとんど負けることのない詩が、負けたとき、指導者はどう寄り添ったか。
 
 高校1年で全国高校総体(インターハイ)に敗れ、練習ができないくらい落ち込んだ。高校2年では全日本選抜体重別選手権で敗れ、世界選手権代表を逃した。そして、2019年グランドスラム大阪では、フランスのブシャールに敗れ、対海外勢の連勝が48でストップした。

「一番、気をつけて伝えたことは、負けた後のこと。グランドスラム大阪で負けたときも、ひと通り、取材受けた後、泣きながら帰ってきた。そのときにも、負けた後が大事だよね、負けた後に強くなったんだよ、この負けを生かさないかんなっていう話はしました。負けること自体が少ないので、かなり貴重な経験だと思うんですよ。それこそ、そこから学ぶことを大切にしてほしいなと思いましたね」

 松本監督は、過去の敗戦で詩が泣いていても、かばおうとはしなかった。「言い訳を覚えたり、負けてつらそうな顔を出して悲劇のヒロインを気取ったりする子、多いですよね。それをやったら勝負師は負けですから。自分の責任で負けたわけですから」と話していた。

 どんな理由があれ、たとえ微妙な判定だったとしても、敗因を分析した。「負けたシチュエーション、取れなかったシチュエーションに対して、どう克服していくか」と受け止め、「勝負の重み、重さをあの1敗が教えてくれた」と苦い経験を次に生かすことを考えた。そして言葉に出さなくても、詩にその成長が見れたときは、素直に喜んだ。 

 こうして負けるたびに強くなっていった詩。最後に垣田氏は、こう話した。

「今はキラキラしてますけど、その日々の練習を見てきた人間としては、地べたはいつくばって頑張ってきたんだよっていうことは分かってほしいです」

(THE ANSWER編集部)

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