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バスケ界で痛感した日本と外国の差 成長期スポーツ選手の「成長力」を引き出す指導法

成長フェーズの「脆弱度」「強度」「成長度」に合ったトレーニングメニューを組む

 次に星川氏は、外傷・障害予防について説明した。まず、肝心なのは指導者それぞれが関わっている競技についてよく知ることだと言う。

「例えばバスケットボールの場合、走ったりジャンプしたりするだけでなく、ボールを投げる動作も頻繁に行います。そのため下半身だけでなく上半身の怪我にも気を付けなければなりません。また、ほかの球技と比べるとコートが狭いので下肢に大きな負担がかかるのも特徴のひとつです。最近では、ルール改正に伴い身体をぶつける機会が多くなってきており、試合後半の怪我が増えています。

 指導者の方にとって、複数のチームに関わった経験がある場合は、それぞれのチームの怪我やその原因を比べることも有効です」

 競技ごとの特徴を把握することに加え、ジュニア期・成長期の外傷・障害予防には大きく3つのポイントがあるのだと言う。

「まずは『脆弱度』。成長のフェーズによって骨が弱い時期もあれば筋肉や腱が弱い時期もあります。やはりこれも人それぞれ違うということを理解しておかなければなりません。

 2つ目は『強度』です。成長が早い人と遅い人とで同じだけの時間試合や練習をすると怪我が起きる可能性があります。成長が早い選手の方がパワーがある可能性がありますし、体重の重い選手に軽い選手が接触することで怪我をする可能性もあります。

 3つ目は『成長度』です。成長のフェーズにより可能な動きが変わります。パワーがないとできないプレーや、スピードがないとできないプレーがあるため、成長度に合っていないプレーをしようとすればそれだけ怪我のリスクが高まります」

 最後に、アントラージュコミュニケーションについても解説。「アントラージュ」とは、フランス語で「取り巻き、環境」という意味で、JOC(日本オリンピック委員会)によると「競技環境を整備し、アスリートがパフォーマンスを最大限発揮できるように連携協力する関係者のこと」と定義されている。さらにその役割を「アスリートを悪しき倫理的問題から守り、正しい身体的社会的成長を守ること」と定義している。

「アントラージュという言葉を聞きなれない方も多いと思います。部活動を行うスポーツ選手のアントラージュとは、選手を取り巻く、選手との関わりを持つ全ての人々のことです。

 例えば中学校には顧問の先生以外にほかの先生もいます。チームによっては外部からコーチを招いている場合もあります。加えて保護者や外部サポーターの存在も大きく、トレーナーがいないチームの人が近くの接骨院の先生からアドバイスをいただいているような例もあります。

 彼らに成熟度の話をすると、興味を持ってもらえ、特に保護者の方々は栄養や生活面のケアにも気を遣ってくださるようになります。だからこそアントラージュとのコミュニケーションはすごく重要で、それによってスポーツ選手は大きく成長することができるのだと思っています」

最後に星川氏はセミナーに参加した指導者の方々にメッセージを送った。

「今回お伝えした内容以外にも、世の中にはいろいろな情報があります。例えばスポーツ庁ホームページの『運動部活動用指導手引』では、バスケットボール協会やサッカー協会、日本陸上連盟など各競技団体が発行する、部活指導の手引きを紹介しています。ご興味ある方は、ぜひ見てみてください」

※1「非認知スキル」 米国の経済学者のヘックマン(J.J.Heckman)が研究において、到達度テストなどを使って測定可能な能力(認知能力)と分けるために、数値では測れない能力を「非認知能力」(Non Cognitive Skill)と名付けた。幼児期に養った非認知能力がその後の認知能力を高めるという研究もあり教育現場での重要性が高まっている。非認知能力には、自制心、自律性、自分を信じる、といった自己の力と、他人と協働するために必要な共感、協調性、道徳性といった社会性の力という2つの側面がある。

※2「アダプティブラーニング」 あらかじめ組まれたカリキュラムに沿って進めるのではなく、個々の習熟度などに応じて進める学習のこと。必要な資質・能力を確実にかつ効果的に育むことが期待されている。

※3「オスグッド・シュラッター病」 主に10歳前後から15歳の成長期(男女とも)に起こる、膝のオーバーユースによるスポーツ障害。

※4「アントラージュ」 競技環境を整備し、スポーツ選手がパフォーマンスを最大限発揮できるように協力連携し合う関係者のこと。マネージャー、代理人、コーチ(教員含む)、トレーナー、医療スタッフ、研究者、競技団体、スポンサー、弁護士や家族も含まれる。フランス語で「取り巻き、環境」という意味がある。

※5「有酸素能力」 運動中に酸素を取り込み、酸素を必要とする体内のエネルギーシステムによってエネルギーを作り出す能力。

※6「骨端核」 子どもの骨の多くは未成熟で、成長に伴って硬くなっていく(骨化という)。骨化は骨幹中央(骨幹)から始まり、成長期に骨端軟骨(いわゆる成長軟骨)の中心に骨(骨端核)ができ、次第に骨端全体が骨となり、骨幹とつながって大人の骨となる。

■星川精豪氏/日本バスケットボール協会技術委員会スポーツパフォーマンス部会、江戸川大学男子バスケットボール部、実践学園中学校男子バスケットボール部、聖路加国際病院整形外科アスレティックトレーナー

 1983年生まれ、山形県出身。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科アスレティックトレーニング専攻修了。新潟アルビレックスBB、青山学院大学フィットネスセンター、早稲田大学ラグビー蹴球部を経て、現在は江戸川大学男子バスケットボール部、実践学園中学校男子バスケットボール部、聖路加国際病院整形外科にてアスレティックトレーナーを務める。日本バスケットボール協会の技術委員会スポーツパフォーマンス部会にも所属する。

(記事提供 TORCH)
https://torch-sports.jp/

(ドットライフ・種石 光 / Hikaru Taneishi)

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