W杯で痛感させられた日本代表GK育成の必要性 川口能活「GKの力で勝てる試合もある」
今大会で痛感したGK育成の必要性、進化するために何が必要なのか
たしかに2-0の状況から勝ちきれなかったこと、勝負どころを見極める眼や試合運びに関しては課題を残しました。でも、それはただ守るだけではなく攻めて、勝ちを掴みにいったからこそ抽出された課題なのです。2002年の日韓大会はホームアドバンテージがありつつ、フラット3を中心とする守備に軸足を置いて戦いました。2010年の南アフリカ大会も岡田武史監督の下、大会直前に守備に原点回帰し、ベスト16に進みました。
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今大会の日本は組織的な守備をベースにしつつも、チャンスの場面では相手ゴール前に人数を割き、スペクタクルなサッカーを披露しようという意思がありました。そうやって得点を奪ったからこそ、ベルギー戦に象徴されるような次の課題と出会うことができました。攻撃にはリスクが伴いますが、トライしなければ次のステップには進めません。同じベスト16でも日本が前へ進んでいることを実感できた大会になったのではないでしょうか。
最後に、僕個人の意見として、4年後に向けてGKのさらなる育成と強化が必要だと感じました。失点はGKだけの責任ではありません。ですがGKの力で勝てる試合があることもまた事実なのです。チームの組織力で守ることは大事ですが、最後はGK一人で守るという強いメンタリティーを持った選手がいてほしい。フィールドプレーヤーが世界と対等に渡り合っていたからこそ、僕個人としては対戦国のGKのレベルの高さを感じました。
ではGKが進化するために何が必要なのか。今大会、日本のフィールドプレーヤーのほとんどが欧州でプレーしていました。その中で、Jリーグでプレーしている昌子選手は彼らと遜色ないパフォーマンスを見せたと思います。だから成長するために海を渡らなければいけないということはありません。南アフリカ大会でゴールマウスを守った川島選手は、当時Jリーグでプレーした経験しかありませんでした。
GKの育成・強化は簡単ではありません。まずは地道な練習で腕を磨き、試合で結果を出さなければならない。それと並行してアンダーカテゴリーの時から国際経験を積むのはとても重要ですし、次のステップとして国際AマッチやACLで重責を背負った中でゴールを守る。それらの過程で、海外でチャレンジできるチャンスがあれば、それも一つの手でしょう。そのすべての延長線上にW杯があるのだと思います。
(SC相模原GK川口能活=元日本代表/98年フランス大会、02年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会出場)
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)