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「五輪かけた演技直前のトイレで生理が…」 食べる事は悪と刷り込まれ、体重にも月経にも無知だった過去――フィギュア・村上佳菜子「女性アスリートと体重管理」

若い世代に伝えたいことは「ご褒美の日を作ること」と村上さん【写真:荒川祐史】
若い世代に伝えたいことは「ご褒美の日を作ること」と村上さん【写真:荒川祐史】

家族にも友人にも体重や生理の悩みを相談できず「自分の弱さを見せたくない気持ちはあった」

 22歳で引退。「食事は最後の一口を残す」を守り抜いた20年の競技人生を振り返り、思うことがある。

 当時はコーチにも、家族にも、友人にも……誰にも、体重や生理の悩みを言えなかった。「自分の弱さを見せたくない気持ちはありました。それはアスリートの本能なのかなと思います」。一方で、大人の指示を忠実に守り、常に自分と誰かを比べていた。自分に軸がなく、自分の体に関心を持てなかった。

「スケート以外に気を配る余裕がなくて。生理は来ないなら来ない方がいい。半年来なくても何も思わない。引退するまでスケート以外、何もしていないし、(健康の)勉強もしていない。当時は先生も昔ながらの指導で、見た目や動きで(感覚的なことを)言われるくらい。海外も一緒で、私も海外の先生に『だいぶ痩せてきたから、今年来るよ』と体型を基準に言われる。私も摂食障害になってしまった選手を多く見てきました。日本に限らずどの国も変わらなかったように思います」

 引退後に婦人科に通うようになり、興味の矢印が自分の体に向き始めた。だからこそ、今、フィギュアスケートに打ち込んでいる若い選手たちに伝えたい。

「ご褒美の日を作るのはすごく大事。私は試合後のバンケットパーティーは『食べる!』と決めて、バイキングを気にせず食べました。もちろん、栄養の知識を持っておくことも大切だし、その上でしっかりと食べることで良い動きにつながる。今はメンタルケアや栄養士さんが入ることも珍しくないし、パワフルにジャンプを跳べる選手も増えている。痩せる、綺麗な体になるだけじゃなく、競技力を高めるために学べる機会を選手に提供することも大事な動きのひとつです」

「小学生の頃から常にダイエットだった」という村上さん。引退後、冒頭のインスタグラムの投稿につながる、体型の変化が起きた。体重が13キロ増加。「(顔が)パンパンだね」「凄い太ったね」――。悪気なく向けられる言葉に傷つき、次第に自分に自信を持てなくなった。

 そして、決心を固めた。

(後編へ続く)

■村上 佳菜子 / Kanako Murakami

 1994年11月7日生まれ。愛知・名古屋市出身。姉の影響で3歳からスケートを始める。トリプルアクセルを跳んだジュニア時代から頭角を現し、15歳だった2009年-10年シーズンにジュニアGPファイナル、世界ジュニア選手権優勝。19歳だった13-14年シーズンに全日本選手権で2位に入り、四大陸選手権優勝を経て、ソチ五輪に出場した(12位)。16-17年シーズン限りで22歳で現役引退。引退後はアイスショーに出演する傍ら、バラエティ番組などタレントとしても活躍する。今年1月に一般男性との婚約を発表した。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)


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