[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ロシアで厳命された100g単位の体重管理 フィギュアと新体操に共通する女子選手の課題【鈴木明子×皆川夏穂】

皆川さんが経験したロシアでの食生活とは【写真:片岡祥】
皆川さんが経験したロシアでの食生活とは【写真:片岡祥】

すり替わってしまった練習の目的「競技のためではなく、体重を落とすために」

鈴木「それにしても、100グラム単位でみられるとは厳しいですね……。体重は少しでも水を飲めば、100~200グラム程度はすぐに増えてしまう」

皆川「はい。なので練習中の水分補給は100ミリリットル単位で考えて飲んでいましたし、練習後、体重のノルマを達成するために、サウナに2時間入って汗を出したりしました。かなり体の負担にもなっていたと思います」

鈴木「驚きました。コーチはもちろん、競技のために厳しく管理をしていたと思います。でもそうなると、選手は目の前の数字ばかり気にしてしまうようになると思います。

 私は大学に入学した頃、18歳で拒食症になり、48キロあった体重が32キロまで落ちてしまったんですね。スケートがうまくなりたくて環境を変えて頑張ろう! と思っていたのに、いつしかスケートをうまくなりたい、五輪に出場したい、ということよりも体重を落とすことが目的になってしまったんです。皆川さんはどうでしたか?」

皆川「私もまったく同じです。うまくなりたい、強くなりたい気持ちはあったものの、毎日先生に課せられた体重のノルマをクリアするための練習になっていました。また、疲労感が強い、調子が悪いなら練習量を抑えたほうがいいと言われても、『ここで練習量を減らしたら、体重が減らないかもしれない。もっとやらないといけない』と、練習をする目的が『競技のため』ではなく『体重を落とすため』に変わってしまいました」

鈴木「皆川さんは日本を離れた状況下で『これが当たり前なんだ』と追い込まれてしまった。その状況を考えると、すごく辛かったと思います。私の場合は『自分でしっかり体重を管理しなければいけない』という完璧主義のところがマイナスに働き、自分で自分を追い込んでしまった。今振り返ると、なぜもっと冷静に、自分の目標に向かって考えられなかったのだろう、と思います。

 ただあの時は本当に精一杯で、『頑張っているんだからこれが正しい』って思い込んでしまったんですよね。もっと自分のことを俯瞰で見られるとよかったのですが」

皆川「わかります。ロシアでは選手たちは皆、体重が増えないよう、朝食や昼食は小さなお皿に肉とサラダを少し、夜はヨーグルトかリンゴだけという食生活をしていたんですね。私は日本でスポーツ栄養学の講習を受けていたので、『こんな食生活は間違っている!』と頭ではわかっていたけれど、体重のノルマをクリアしなければ先生に練習を見てもらえない。食べるか、食べないか、その選択はとても難しかったです。

 先生とのコミュニケーションをしっかりとれなかったことも壁になりました。高校時代はロシア語もあまりできなかったので、私は食事が少なすぎると体にすごく負担がかかる、だからもっと栄養バランスのよい食事をしたい、と伝えられませんでした」

鈴木「実際、その食生活を続けていて、不調はなかったんですか?」

1 2 3 4

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集