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18歳で自分を守る「鎧」にメイクを選んだ日 安藤美姫がいまの女子選手に伝えたいこと

安藤さんは「アスリートも一人の女性」ということを大事にしてほしいと語る【写真:松橋晶子】
安藤さんは「アスリートも一人の女性」ということを大事にしてほしいと語る【写真:松橋晶子】

「私たちはスポーツをするためだけに、生まれてきたのではありません」

 衣装をつけ、プログラム用のメイクを施すことで、素の自分から演者へと切り替わるスイッチも入った。「普段の自分ではない何者かになれる」。それも、競技メイクに感じる魅力だという。

「スケーターにとってメイクは、氷上の上でもう一人の自分を表現するものだと思います。音楽に乗って演じる間、普段はなれない自分になれる。

 私は結構、人見知りで、自分から周囲に入り込めないタイプなんですね。例えばパーティや会食の場で自分から声を掛けることができず、いつもシュン……となっちゃう。また、芯のある女性でありたいという想いは強いのですが、現実世界ではなかなか難しい。

 だけどリンクの上では、クレオパトラになれたり、カルメンになれたりする。もう一人の自分になれる、唯一の時間なので、メイクを楽しまないと損(笑)。もしかしたら、なりたくてもなれない自分の姿を、氷の上で表現していたのかもしれないですね」

 フィギュアスケートは競技の特性上、メイクアップをして大会に臨む。なのに競技メイクでさえ批判の声が届いたという話には驚いた。残念ながら日本ではメイクアップをして試合に臨む女性アスリートが、世間から批判されることは少なくない。北京五輪でも特定の選手に批判が集中し、物議をかもした。

「批判の原因には、観ている人がスポーツに対して抱く、固定観念があると思います。私たちって、オフの日にカフェにいても『そんなことしているから結果が出ないんだ』とか言われることも多くて。アスリートは休んではいけない。アスリートはメイクをしてはいけない。そう考える方は、まだまだ多いのかもしれません。

 でも私たちはスポーツをするためだけに、生まれてきたのではありません。アスリートもメイクに興味を持つことはあるし、一人の女性です。そのことをもっと、大事にしてほしいと感じています」

 例えば、成長やホルモンに伴う体の変化への理解も一つ。成長期や月経が始まる頃、ホルモンバランスの変化に伴う苦労は、アスリートでなくても多くのが経験する。安藤さんは、顔がパンパンになったり、女性らしい体つきになっていくことで、恥ずかしさを感じたり、悩んだりするアスリートもたくさんいる、と話す。

「これをどうコントロールし、乗り越え、競技を続けていくか。私たち女性アスリートには競技を続けるうえで、それらがエキストラパッケージとしてついてくる。これからは、こういった女性としての苦労も伝えていきたいですね」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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