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日本に女性エリートコーチが少ないのはなぜ スポーツ界で固定された“男女の構図”とは

競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの「THE ANSWER」対談連載。スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第2回のゲストはスポーツ庁委託事業「女性エリートコーチ育成プログラム」を率いる日体大の伊藤雅充教授。

井本直歩子さんと日体大の伊藤雅充教授が女性エリートコーチが少ない理由について対談した【写真:中戸川知世】
井本直歩子さんと日体大の伊藤雅充教授が女性エリートコーチが少ない理由について対談した【写真:中戸川知世】

連載第2回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×日体大・伊藤雅充教授」前編

 競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの「THE ANSWER」対談連載。スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第2回のゲストはスポーツ庁委託事業「女性エリートコーチ育成プログラム」を率いる日体大の伊藤雅充教授。

 スポーツ界の発展に不可欠なジェンダー平等のための、パズルの大きなピースが女性エリートコーチ育成。昨年の東京五輪で、日本選手団のコーチ全体に占める女性コーチの割合は約20%。状況改善には依然高い壁が立ちはだかる。伊藤雅充教授に、現状の課題と展望について聞いた。全3回の前編は、スポーツ界に女性エリートコーチが少ない理由について。(構成=長島 恭子)

 ◇ ◇ ◇

井本「昨年末に東京オリパラ組織委員会のジェンダー平等推進チームで、大会後報告書をまとめました。東京五輪・パラリンピック全出場国のデータによると、選手団のコーチ(コーチ=監督・コーチなどの指導陣を指す)で女性が占める割合は、五輪が13%(リオデジャネイロ五輪は11%)、パラリンピックは20%でした。日本選手団は何%だったんでしょうか?」

伊藤「五輪の日本選手団は20.1%(JOCウェブサイトでスタッフ数をカウント)。これはリオ五輪(14%)と比べ、ほんの少し増えていただけでした。パラの方が29.9%(JPC発表の資料からカウント)と、比率がよいですね」

井本「スポーツ界のジェンダー平等実現には、女性エリートコーチ(代表レベルの選手を指導するコーチ)の育成は不可欠だと考えます。今日はその課題と方向性についてお聞きしていきます。昨今、女性コーチ育成の取り組みへの注目は高まっているように感じますか?」

伊藤「今、すごく感じています。女性エリートコーチが少ないという問題を、メディアを始め、いろいろなところで取り上げて頂くようになりました」

井本「いきなりですが、たくさんある課題のなかで、伊藤先生は何が一番、女性エリートコーチが少ない原因だと思われますか?」

伊藤「難しい質問だと思いますが、一番は文化的なマインドではないかと思います」

井本「スポーツ界にはまだまだ、男性コーチに教わる女性アスリート、という固定された構図がありますよね」

伊藤「コーチもアスリートも、男性側も女性側も、コーチ職は男性がするものという思い込みがあるような気がしています。いわゆる『男性的』で、『俺についてこい』みたいなタイプが、典型的なコーチのイメージとしてあるのかなと。『男性的』という言葉も、もはやよくないのですが」

井本「アメリカの女性コーチも、女性が女性のトップアスリートのコーチになっても、選手が言うことを聞かない、と話していました。女性選手側にも、女性コーチには力がない、という思い込みがあるそうです」

伊藤「実際、アスリートを対象にした研究でも、『男性コーチに教わりたいと思う』という声は多いんです。完全にバイアスですよね」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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