800m日本記録を10年間守った川元奨が引退レース 涙なし、引き際に信念…“16年前”と重なった最後の日

高校記録&日本記録を樹立
現役生活で印象に残っているレースについては「高校記録を出した時と日本記録を出した時ですね」と言った。高校時代には佐藤清治氏の高校記録を、大学時代には横田氏の日本記録を更新。「目指していた記録だったので、本当にうれしかった」と振り返った。くしくも、当時の高校新記録となる1分48秒46をマークしたのは2010年10月24日。ちょうど16年前のことだった。
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19日の国民スポーツ大会(青森)男子800メートル決勝では1分48秒13の5位だった。ただ最後の舞台は、日体大のトラックを選んだ。「いろんな記録を出した場所。最後は日体大で走ろうと思っていた」。振り返れば、2016年リオデジャネイロ五輪の参加標準記録を突破したのも、日体大での記録会だった。また青森での国民スポーツ大会は足を運べない人も多い。最後のレースはより多くの人に感謝を伝えようと、首都圏で足を運びやすく、なじみも深いこの場所を選んだ。
現役引退を決断した経緯については、こう言った。
「日本選手権は入賞できないといけない。そう思っていたが、最近は入賞が難しかった。なので、もう引退してもいいのかなと思いました」
2024年の日本選手権は準優勝を果たしたが、昨年は予選落ち。今年6月の日本選手権で3位以内に入れなければ、現役生活に区切りをつけようと考えていた。結果は予選3着で決勝進出はならなかった。川元の信念を貫いた。
近年、日本の男子800メートル界は急速な進化を遂げている。9月の愛知・名古屋アジア大会では、落合が同種目64年ぶりとなる日本勢の金メダルを獲得。日本記録1分43秒45を持つ落合、日本歴代2位の1分44秒32を持つクレイ・アーロン竜波(JAL)らが台頭し、世界との差は少しずつ縮まっている。かつて日本人として初めて1分45秒台に突入した川元の自己ベストは、今や日本歴代9位となった。それでも日本の男子800メートルの進化を語る上で、川元の存在は欠かせない。
川元は「頑張ってほしい。今はその気持ちしかないです。世界選手権、オリンピックの決勝に出てほしい。落合君が1分43秒台を出しましたけど、(世界大会の)決勝も狙えるタイムだと思う」と後輩たちへの期待を込めた。
来季からはスズキでコーチを務める。「選手の力を出し切れる指導、コーチングをしていきたい」と川元。競技人生に笑顔で一区切りをつけ、新しいステージに向かっていく。
(THE ANSWER編集部・上田 悠太 / Yuta Ueda)
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