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「日本は今、適切な野心を持っている」 日本代表HC復帰の真相、“超速”で目指す2027年W杯の青写真――エディー・ジョーンズ独占インタビュー

「日本は今、適切な野心を持っている」というエディーHC【写真:矢口亨】
「日本は今、適切な野心を持っている」というエディーHC【写真:矢口亨】

日本のラグビーが持つ変革への意欲「日本は今、適切な野心を持っている」

 一方で、エディーが次回W杯まで日本協会と蜜月でいられるかは流動的だ。決して円満とはいえない退き方をしたイングランド、オーストラリアでは、エディー自身も語ったように、是非論はさておき、HCの求めるものに協会が応えきれなかったことも大きな原因だ。

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 日本での第1次体制のときから、チームが勝つために必要なことがあれば雇い主である協会とぶつかりながらでも、あらゆる可能性を追求し、実行するタイプの指導者だった。組織の中では、厭われるタイプでもある。15年で日本代表から離れた時も、協会との齟齬は間違いなくあった。もちろん日本協会も当時から組織力を高めているが、今回の体制で指揮官の飽くなき希望、欲望に100%応えることが出来るかはわからない。

「そういうことは考えました。ただ、オーストラリアでも、もし私が50歳だったら協会とファイトし続けたでしょう。でも、毎日ファイトはしたくはなかったんです。日本は今、適切な野心といえばいいのでしょうか、そういうものを持っています。これから変わらないといけないのが現実ですが、そのために私が何かを助けることができればいいと考えています」

 日本協会、そして日本のラグビーが持つ変革への意欲。それは例えば、W杯の2度目の開催であり、プロ化を見据えたリーグワンの成功などだ。その変わりたい、変えたいという思いに、2015年とは異なる熱量を感じたことがエディーの決断を促した。

 代表指導者選考の中で、選ぶ側の日本協会はプレー、指導経験など日本の国内状況に理解のある人材を選考条件に入れていた。エディーにはおあつらえ向きの条件だったが、協会側への要望も伝えているという。

「いくつかありますが、日本代表にはしっかりとした準備時間が必要だということは話しました。リーグワンがよりプロ化している中で、代表との対立は必ず起こります」

 対立と聞いてすぐに頭に浮かぶのは、プレミアシップ(イングランド)、TOP14(フランス)と各国協会の対立だ。世界の中でもプロリーグの先鞭を切り、日本も含めた各国リーグの1つのお手本とも位置付けられるリーグだが、プロチームとして自分たちの試合の価値を高めるには、代表クラスの有力選手をどこまで自チームで獲得し、プレーさせるかは強化と同時に経営面でも重要だ。そこで、より多くの有望選手をより長く拘束したい代表チーム(協会)とどうしても対立が起こる。

「たぶんそういう状況が日本にも来ると思いますね。リーグがプロ化すれば、どの国でも起こることだが選手をキープしたいと思う。そうなると代表での強化時間は少なくなる。大きな意味でいうと、お金がかなり課題になる。日本はまだそこまで来ていないが、それが起こる前に、しっかり話し合っていく必要があるでしょうね」

 どちらが正しいという議論ではなく、クラブのプロ化が進む国では、このような摩擦が起こるのが当然の帰結なのだ。ようやくプロ化への1歩を踏みしめた程度の日本では、まだ深刻な対立、議論にはなっていないが、協会、リーグ、チーム関係者もこの課題は誰もが認めている。

「なので、正しい、適切なバランスが必要です。強いリーグワンというトーナメント、強い日本代表の両方が一丸でいろいろな方向に向かっていく。それはリクエストというよりも、話し合いというべきでしょうね」

 では、グラウンド上でのエディーの挑戦、課題は何だろうか。第2回では、指揮官が選手に求めるもの、どのようなアプローチで代表強化に取り組むのか、そして世界のラグビーの「今」をどう読み取るのかを聞く。

(第2回へ続く)

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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