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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

現在の状況はプロ化に向けた“プレシーズン”

 おそらく、計画されていたことがすべて上手く進めば、リーグはなんの問題もなく進められただろう。だが、何か躓くようなものがあれば、見切り発車の弊害が顔を出す。

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 試合がコロナ感染により開催不可能となった場合、順延ではなく中止となったのも、要因の1つはスケジューリングに周到な準備、対策を講じるための時間が不十分だったためだ。

 ファンに対しても、急ぎ過ぎた準備で影響はあった。リーグの概要が発表されたのは21年10月26日。開幕まで3か月を切っていた。しかも、発表時にはキックオフ時間が未確定で、開幕1か月を切った12月下旬でもディビジョン1はレギュラーシーズン16節中11節までの時間発表という状態だった。事業化推進を掲げたリーグにもかかわらず、試合時間も未定では、遠隔地から応援に行きたいファンは準備ができず、チケット購入もままならない状態だった。

 リーグ外に目を転じても、下位リーグと位置づけられるトップイーストなどに所属する複数のチームからの不満も聞こえてくる。来シーズンへの強化や予算を最終確定する3月の時点でも、リーグワン側からの来季参入へ向けた条件などの説明が十分にされていないことに対する苛立ちや不信感があるのだ。

 1年に満たない時間で、結果的に国内トップリーグの2チームが消滅、1チームが規模縮小という事態が起きている現実も、この2022年1月の開幕ありきのカレンダーが影響していないか。ここはリーグ側、協会も含めて検証が必要ではないだろうか。

 その一方で、この見切り発車のリーグだからこその、独自の対処策も準備されている。「フェーズ制」という考え方だ。

 すでに書いたように、リーグワン参入チームの運営形態を見ると、いわゆる従来の企業スポーツからプロチームへの移行段階にある。リーグ側からは、参入条件の柱の1つとしてチーム運営の事業化が求められている。今は従来と同じように、親会社が100%の運営費を負担しているチームがほとんどだが、数年という時間をかけてチームが段階的に“独り立ち”していくことが求められている。そのために、リーグでは3、4年ごとにフェーズ1、2という区切りを設けて、そのフェーズが移行するたびに、事業性を高め、さまざまな規約や運営形態を見直し、修正しながら、リーグを理想の姿に近づけていこうとしている。

 開幕は急いだが、変革は段階的に進めていく。見切り発車感のあるキックオフだが、見方を変えると現在の状況を「プレシーズン」と捉えることもできる。この期間に、さまざまな試行錯誤をしたうえで、フェーズ2では、より質の高いリーグ運営、そしてチームの在り方などを目指す。プロ化も、各チームの事業化の進捗状態を判断した上で、フェーズ2、フェーズ3と進めていくことができる。もちろん、巨費を投じているスポンサーなどのことを考えれば、リーグ側としては口が裂けても「プレシーズン」と言えないのは当たり前のことでもある。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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