各競技団体や組織のリーダー層がD＆Iをチャンスであると思えるか

河合「水泳に限ってですが、今はないと聞いています。その点も、障がいのある人のなかで水泳を始める人が少ない要因だと考えます。しかし、今は体育の授業は外部の専門コーチに指導受託をする時代です。水泳に限らず、学校教育で指導するならば、当然、外部コーチも障がい者やLGBTQに対する知識や心構えを身に着けていかなければなりませんよね」

井本「スポーツ界のD＆Iを推進するうえで、義務教育に組み込まれている水泳と陸上はやはり、アマチュアスポーツのなかでは2トップの競技です。それだけに、競技団体が率先し、D＆Iを実現する施策を、どんどん進めていってほしいと願っています。それから、今日お話しを伺い、河合さんには今後、私自身が取り組むスポーツ界の多様性を推進する活動にもぜひご協力頂きたい、どんどん巻き込んでいきたいという想いが強くなりました（笑）」

河合「いいですよ、巻き込まれても、僕は楽しくやりますから（笑）。僕はD＆Iは、イノベーションを生むヒントとかきっかけになると思っています。ですから、D＆Iを『やらなきゃいけないことリスト』に入れるのではなく、『やりたいことリスト』に入れて取り組むことで自分達の価値を高めるんだ、と考えてほしいんですね。各競技団体や組織のリーダー層が、D＆Iをチャンスであると思えるか、そして活かせるかどうかで、今後のスポーツ界はより多くの方々の共感を得て、飛躍的に発展していく可能性があるのだと思っています。今から、やるか、やらないか……です！」

井本「本日はありがとうございました」

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■河合 純一 / Junichi Kawai

　静岡県出身。5歳から水泳を始める。先天性の弱視で、15歳で全盲となる。筑波大付属盲学校（現資格特別支援学校）在学中、1992年バルセロナ・パラリンピックに出場。計5個の銀・銅メダルを獲得。以降、2012年ロンドンまで6大会連続で出場し、金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した。2016年には日本人として初めて国際パラリンピック委員会（IPC）パラリンピック殿堂入り。早稲田大学大学院在学中に発足した日本パラリンピアンズ協会会長や日本パラ水泳連盟会長などを務め、2020年、日本パラリンピック委員会（JPC）委員長に就任する。東京大学教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センター協力研究員、東京2020パラリンピック競技大会・北京2022パラリンピック冬季競技大会日本代表選手団団長。

■井本 直歩子 / Naoko Imoto

　東京都出身。3歳から水泳を始める。近大附中2年時、1990年北京アジア大会に最年少で出場し、50m自由形で銅メダルを獲得。1994年広島アジア大会では同種目で優勝、1996年、アトランタ五輪4×200mリレーで4位入賞する。2000年シドニー五輪代表選考会で落選し、現役引退。スポーツライター、参議院議員の秘書を務めた後、国際協力機構（JICA）を経て、2007年から国連児童基金（ユニセフ）職員となる。JICAではシエラレオネ、ルワンダなどで平和構築支援に、ユニセフではスリランカ、ハイチ、フィリピン、マリ、ギリシャで教育支援に従事。2021年1月、ユニセフを休職して帰国。3月、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーに就任。6月、社団法人「SDGs in Sports」を立ち上げ、アスリートやスポーツ関係者の勉強会を実施している。